4人で拾った大量のどんぐりは、明日、日山から先輩に渡してもらうことになった。
頭から鳥が離れた日山は元気いっぱいで、聞いてもいないことを教えてくれた。鳥居のある大神池は古くからあるため池で、祀られているのは龍神だとか、どんぐり拾いをした小神池では、小さい頃、虫を採ったりどんぐりを取ったりして遊んだとか。
そんな日山の独白を聞きながら堤防沿いを戻っていると、ずっと黙っていた神山が突然口を開いた。
「日山。駅は向こうなのか?」
「そうだぞ。この道を下って……いたい! いたい!」
話を最後まで聞かず、神山が日山の頭をむんずと掴む。
「お前、寝ぼけてたな」
ここはちょうど、神社から堤防沿いに出た場所だ。寝ぼけた日山に、駅と反対方向を教えられたと思って怒っているんだろうけど、あれは多分、ヒナ鳥に言わされたんだ。
「まあまあ、神山。許してやってよ」
「山口も、こいつに振り回された」
「いや、俺は別に……」
神山の鋭い目に、ちょっと怯む。
俺がヒナ鳥を放置していたのが原因で、日山が悪い訳じゃない、と言いたいけど言えない。
「まあ、いいんじゃね。知らない町を歩くのも、どんぐり拾いも童心に帰れてちょっと面白かった。それより日山、どんぐり少しもらってもいいか? 妹達にやりたい」
一番疲れているはずのあっくんが笑ってそう言うと、神山はしぶしぶながらも日山を解放した。
「文化祭にも来ると思うけどさ、ハンドメイド部って、どんぐり使って何を作るんだ?」
あっくんが、空気を変えるように話題を変える。
「知らない。でも、明日どんぐり渡す時に聞いておく」
「おう、よろしく!」
それから駅に着くまで、あっくんを中心に文化祭の話で盛り上がった。
「ふーん……じゃあその鳥は、木の精か何かか?」
「あ! なるほど、そうかもね」
神山と別れてから、あっくんにどんなことが起こっていたのかを簡単に話した。あっくんに言われて、あの鳥の正体が初めて分かった気がした。それが正解かどうかは分からないけど。
「昨日から、神山のお母さんと連絡取れないんだよね。昨日送ったメッセージにも既読が付かないし、どうしたんだろう?」
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