ハチを追って足早に道を上って行くと、堤防の中が見えてきた。堤防はきれいに舗装された道で、ところどころ街路樹も植えられている。川か何かと思っていた堤防の向こうは、とても大きな池で、堤防脇に大きな鳥居を見付けた。

「とも! あっちに鳥居があるぞ」

「うん」

 堤防脇に立つ鳥居。鳥居は神域への入り口を示すものだというのは知っているけど、社殿らしきものが見当たらない。よく見ると、池の中に小さな祠が立っていた。鳥居に比べてとても小さい。だけどあの祠が、池自体が神域だと伝えていた。

「あそこに行けばいいんだな!」

 間違いない、あれだ。俺が映像で見た鳥居。だけど

「ごめん。あそこじゃない」

「えー! おっと……」

 ゴールが見えて走りかけたあっくんが急に止まって、日山を落としかける。

「だけど、この近く。こっち」

 堤防沿いから少しそれた先、小神池公園と書かれた看板の前で、ハチが待っていた。ハチは、早く来いと言うように、尻尾を振りながら俺を見ている。

「あっくん、こっち。日山を連れて来て」

 あっくんに声をかけながら、ハチのところに向かった。

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