「ごめん……」
「しゃーねーんじゃね? 日山もこんなんだし。また今度参りに来よう」
とぼとぼと言いたくなるほど肩を落として歩く俺を、あっくんが慰めてくれる。神山も言葉はないけど、あからさまに落ち込んでいる俺を気にしてくれているようだった。
結局、俺はあそこから先には進めず、神山を呼び戻して帰ることにした。神山が理由を尋ねると、あっくんが「日山が寝てしまって起きる気配もない。こんなの、お参りに連れて行くのは神様に失礼だろう」と説明すると、家に神様がいる神山は、あっさり納得してくれた。ここまで3人を連れて来といてなんの収穫もなかったこと、何もしないまま帰る理由を日山に押し付けたこと、何より自分のふがいなさに本気で落ち込む。
ちらりと、隣を歩くあっくんを見る。向きが変わって、あっくんの背中で静かに寝息を立てる日山の穏やかな顔がよく見える。そして、鳴くのをやめたヒナ鳥に視線を移す。ヒナ鳥は、日山の頭の上で、ぐったりと倒れていた。
倒れた姿を見た時、死んでしまったのかと思ってぎくりとした。そんな俺に気付いたのか、ヒナ鳥は生きていると言いたげに薄く目を開いて俺を見た。だけどその後は、ピクリとも動かなくなった。そんなヒナ鳥の様子から、一刻の猶予もないことが分かる。時間がなくなったら、どうなってしまうのかは分からない。だけど、すぐにあの場所に連れて行かないといけないことを、強く感じる。
あの場所は、どこだろう?
何度記憶を呼び起こしても、分からない。日山にヒントになりそうな話を聞きたいけど、日山の目が開く様子はない。このまま駅に戻る前に、何か出来ることがあるだろうか?
「山口」
考えながら歩いていると、神山に呼び止められた。
「ここはどこだ?」
「えっ?」
「駅に向かってるんじゃなかったのか?」
「あ、うん……そう、だけど……」
帰りたくなくても帰る流れになってるから、駅に向かって歩いてたはずだ。
「もうとっくに駅に着いていい頃なのに、着かない。それに、周りの風景が駅前と違うようだ」
「へ?」
神山に言われて周りを見る。一戸建て住宅に小さめのアパート。車1台が通れる程度の狭い道。道の先は、対面通行ができる少し広い丁字路。
「目印もない住宅地を抜けてきたし、道を間違えたんだな」
あっくんの言葉を聞いた途端、神山の顔があからさまに不機嫌になった。そしてなぜか、射殺しそうな鋭い視線を、あっくんの背中で寝ている日山に向けた。
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