駅を出て、日山の案内で住宅街の細い道を何度も曲がりながら歩いて行く。

「あそこだ。あそこでいいんだな?」

 しばらく歩いて少し広い通りに出ると、日山は通りの先を指さした。通りの先に、大きな石造りの鳥居が見えた。

「…………うん」

 あの鳥居が、頭に浮かんだ映像の鳥居と同じかどうか、よく分からない。せっかく来たし、とにかく行ってみるしかない。

 目的地が分かったからか、さっさと帰りたいのか、神山が先頭を歩き出した。日山が神山の後を歩く。俺とあっくんも、2人の後に続く。

 歩きながら、周囲を観察する。ドラッグストア、飲食店、コンビニ。どこにでもある普通の風景。日が沈み始める時間帯なのに、神社に近付くほど明るくなる気がした。神社の清浄な空気が目に見えているのだと、勝手に解釈した。神山の家とは真逆の感じ。

 神社の奥の社殿が見えた辺りで、前を歩いていた日山がしゃがんだ。

「わっ! おい……」

 危うく、蹴とばすところだった。

「日山、どうした?」

 しゃがんだその場に尻を着き、立てた膝に顔を埋める日山を、あっくんが心配そうに聞く。俺は、座り込んだ日山よりも、その頭のヒナ鳥から目が離せない。さっきまで閉じていたはずの目が、大きく開かれ俺を見ていた。

「眠い……」

「は?」

 絞り出すような声の後、静かな寝息が聞こえてきた。

「おーい、日山。こんな所で寝るなー」

「うん……」

 あっくんが日山の耳元で呼びかけても、小さな返事しか帰って来ない。

「しゃーねぇなぁ。ほら、乗れ」

 あっくんは、日山に背中を向けてしゃがむ。歩けなくなった日山をおんぶしてやるようだ。

「とも。日山乗せてくれ」

「あ、うん」

 力の入らない日山の腕を引き上げ、あっくんの大きな背中に被せるように乗せる。

「よっと」

 あっくんが、日山を背中に乗せて立ち上がっても、日山に反応はない。すでに、寝落ちしたみたいだ。

「じゃあ行くか」

「あ、うん」

 日山の鞄を拾い、あっくんと並んで歩く。いないと思っていた神山は、少し先で俺達を振り返って見ていた。神山は何か言いたそうだったけど、結局、何も言わずにまた先を歩き出した。

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