寝転んだまま、他に出来ることはないかを考えていると、耳元でかわいい声がした。
『わん』
「ハチ」
すぐ横に、ハチが尻尾を振って立っていた。ハチは俺に近付くと、ペロペロと顔を舐め始める。
「元気付けてくれてるの?」
ハチからの返事はない。頬を、口を、ただ熱心に舐めている。舐められてる感触はないけど、俺を元気付けようとしてくれている気持ちは、痛いほど伝わってくる。
「ハチ、ありがと」
触れることのできない頭に手を伸ばし、そっと撫でる。フリでしかないそれを、ハチはちぎれんばかりにしっぽを振って、喜んでくれる。
ふいに、あっくんがヒナ鳥をエア撫でしていたことを思い出した。
勢いよく体を起こし、ベッドに座ってハチの顔を真っ直ぐ見る。
「ハチ。日山の頭に鳥が乗ってたこと、気付いてるよね?」
『わん!』
元気な返事を肯定と捉えて、話を続ける。
「ハチはあの鳥、どう思う?」
ハチは、聞かれた意味が分からないといった感じで、首を傾げた。
「あの鳥、危ない?」
また、首を傾げた。質問の仕方を変えてみる。
「あの鳥に、危険はない?」
『わん!』
元気な返事に愕然とする。
俺に危険がないと言う意味じゃないのは、分かる。あっくんの体に憑いたシミや、あっくんに敵意を向ける三重先輩にも飛びかかろうとしていたハチだから。
危険じゃないのに、なぜ日山は、あんな状態なんだ?
分からないことだらけで専門家の意見を聞きたいのに、一晩経っても、神山のお母さんに送ったメッセージに既読は付かなかった。
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