日山が頭にヒナ鳥を乗せていることに慣れた頃、あっくんは俺にしか分からない遊びをしかけるようになった。

 日山を見る時、つい視線が頭上に行ってしまう事は、あっくんにはすぐにバレた。それで何が見えるのかを教えると、日山の頭を直接触らないよう少し手を浮かせて頭を撫でるふり『エア撫で』をするようになった。日山は、直接頭を撫でないあっくんを少し警戒してるようだけど、俺の目には、ヒナ鳥を撫でているように見えて、ちょっと面白い。

 ある日、俺もあっくんのマネをして、日山の頭をエア撫でしてみようとそっと手を伸ばした。すると、今まで微動だにしなかったヒナ鳥がゆっくりと目を開け、俺の手に視線を向けた。

 開いたヒナ鳥の目は、体の黒さに反して明るい琥珀色。こんな鳥、見たことがない。

 突然動いたヒナ鳥にびっくりして伸ばしかけた手を止め、そっと引っ込める。するとヒナ鳥は、眠くて仕方がないといった感じで再び目を閉じ、元の姿に戻った。



 それから、ヒナ鳥は時々目を開けるようになった。手を伸ばさなくても、日山に近付いただけで、目を開いて俺を見た。だけどやっぱり眠いのか、開いた目はすぐに閉じてしまう。眠いのに起こして悪いと思いながら、俺を見てくれる姿が可愛くて、近付いたり離れたりを繰り返してついつい遊んでしまう。

 俺の中でヒナ鳥は、日山の頭を巣にした可愛いマスコット。そんな程度の気持ちで、全く警戒していなかった。

 そんな俺の考えが甘かったと気付いたのは、ヒナ鳥が目を開いてから一週間が過ぎた頃。

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