ハチは、神山の後ろを付いて動きながら、コートから目を離さない。またあの黒いモヤが現れないか見張っていてくれているのだろう。本当に頼りになる。

 ハチと一緒にいるから、どうしても視界に入る3匹の犬。じっと立っている2匹に対し、シェパードだけが、落ち着きなくその場をくるくると回っている。じっとしているのが苦手なようだ。どんなに動いても、決して神山の前には出ない。それは、写真に写ってしまわないために思えた。

「おっしゃ!」

「オッケー!」

 犬に気をとられている間に、コートから歓声が上がった。慌ててコートに視線を戻す。あっくんが、チームメイトと拳をぶつけ合っていた。またあっくんのスパイクが決まったらしい。

「月山ー! ナイスキー!」

 よく知った声が、少し離れた所からした。視線を向けると、日山が3年の先輩達の隣にいた。

「もっと応援してやれ」

「はい!」

「もっと大きな声で」

「はい! 月山ー! がんばれー!」

 振り返ったあっくんが、日山に笑顔で軽く手を上げる。「良くやった」と、先輩に頭を撫でられ、日山は嬉しそうな顔で首をすくめる。

 俺が相手をしてやらなかったとはいえ、知らない3年の先輩と一緒に観戦する日山のコミュ力の高さにちょっと驚く。だけど、あっくんに集中出来て都合が良いので、放っておくことにする。

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