「神山くんが撮った写真の幾つかに、白い筋とかもやが写ってるのがあってね」
「は、はあ……」
「撮影会の時に君が撮ったやつにも写ってたでしょ?」
「そ……そうでしたっけ?」
俺の顔と共に忘れて欲しかった失態を、先輩は両方ばっちり覚えていた。その上、とんでもないことを言い出す。
「文化祭でする写真展で、心霊写真コーナーを作ろうと思ったの!」
「えっ?」
「ね、面白そうでしょ?」
反論して大丈夫なのか、先輩だし同意しないといけないのか迷っていると、迷いのない言葉が斜め前から放たれた。
「そんなコーナー、菅原先輩しか喜びませんよ」
先輩に対しても、全く遠慮のない言い方。菅原先輩は3年生じゃないのか? そんな言い方して、大丈夫か?
「マジの心霊写真かどうかは兎も角、ウケると思うんだけどなぁ」
大丈夫だった。神山のぶっきらぼうな物言いに、眉1つ動かさない。
「失敗写真を、変な風にさらされたら迷惑です」
「はいはい。じゃあ、今日は心霊写真を撮らないように気を付けてね」
「はい。白とびしないように気を付けます」
写真部に行き渋ってたからちょっと心配してたけど、菅原先輩とは気が合うみたいだ。
神山は、目つきは悪いしぶっきらぼうな話し方で、ちょっと怖い雰囲気があるけど、付き合っているうちに、面倒見の良い優しいやつだと分かってくる。菅原先輩も、神山の人柄を分かってくれているようでちょっと安心した。それと同時に、菅原先輩に少し悪いことをしてしまった気もした。申し訳ないけど、神山はもう、心霊写真を撮れないと思う。
写真に写っていた白い筋の正体に気付いた日の晩、俺はそのことを神山のお母さんに伝え、写らないように出来るかどうかを尋ねた。すると、神山のお母さんはすごく驚いて、こう言った。
「あの子、写真部に入ってたの!?」
神山のお母さんは、神山が学校で心霊写真を撮ったどころか、写真部に入ったことさえ知らなかったという。絶賛反抗期中とはいえ、何の部活に入ったかを教えないのは、さすがにダメだろうと、神山にちょっと呆れた。
心霊写真については、犬も他の霊も写らないようにすると断言していたから、神山が心霊写真を撮ることは、もうないだろう。
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