授業が終わり、バレー部に向かうあっくんを見送り、5組に行く。神山、日山と3人で学食で飯を食ってから、神山は写真部に、俺と日山は、ギャラリーで見学することになった。

「久しぶり! 私のこと、覚えてる?」

「はい。お久しぶりです……」

 学食前で、写真部副部長の菅原先輩に会った。

「さすがに公式戦は無理だけど、学内の練習試合は結構近くで観れるんだよ。間近で観たくない?」

「そう、ですね……」

 先輩は、俺の目の前に座って、うどんをすする合間に写真を撮る楽しさ、写真部ならではの役得を熱心に語ってくれる。

 先輩は「友達は帰って一緒に食べる相手がいないから、同席していい?」と言っていたけど、次々と声をかけられる様を見ていると、俺達を勧誘したいための方便のように思えてくる。

「どう? 楽しそうでしょ? 入部する気になった?」

「えっと……」

 正面からにっこり笑って誘われると、断り辛い。どう答えようか困っていると

「せっ、もぐ……かくだが……もごもぐもぐ……ぼくとやまく……ごっくん! 科学部に入っているので、写真部に入れません。すみません」

 隣で頭を下げた日山にならい、俺も頭を下げる。飯を頬張ったまま喋るなと注意したかったけど、今はやめておいた。

「兼部でも構わないよ」

「いや、科学部も忙しいから無理です。すみません」

 科学部はそんな忙しい部活じゃ……でも、黙っておこう。

「そっかー、残念」

 先輩は諦めきれないといった顔で、日山ではなく、俺をじっと見る。俺は先輩の視線から逃れるために、丼で顔を隠すようにしながら豪快に牛丼をかき込む。

「……ごふっ!」

 ちょっとむせた。

「慌てて食べるな」

「ほうた…… もぐもぐ……はぐもぐいは……ほぐ、ない……」

「ごめん……」

 もごもごしながら何か言ってくる日山を無視して、神山が渡してくれた茶を飲む。

「山口くんが入ってくれたら、面白い写真展が出来ると思ったのになぁ」

 俺達の様子を笑顔で見ていた菅原先輩が、気になることを言った。

「面白い写真展?」

「そう!」

 ぼそりと呟いた独り言は先輩に届いてしまい、先輩は顔を輝かせて俺を見る。そんな先輩を、神山はうんざりした顔で見る。

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