「それで? 俺に何が憑いてんだ?」

 電話に出た途端、あっくんはそう聞いてきた。

 これまでの動きから、自分に何かが憑いていると見当を付けていたらしい。俺は、月曜日の朝に見た足首のシミから、神山のお母さんが言っていた、生霊かもしれないことまで全部話した。

「誰か心当たりある?」

「あるようなないような」

「どういうこと?」

「自分で言ってもなんだが、3年もいる中で1年の俺が活躍したら、妬む奴がいてもおかしくない」

「うん。俺もそう思う」

 だからバレー部の練習を見て、生霊を飛ばすほど妬んでる奴を突き止めたいと思ったんだ。

「その一方で、うちみたいな弱小チーム内で、他人の活躍を妬むような奴いるかな? とも思ってる」

「そうなんだ……」

「強豪校なら足の引っ張りあいとかありそうだけどさ、俺らは『楽しい』が一番だから、バレー部の中で俺に生霊飛ばすほど妬むような奴がいるとは思えねぇんだよな」

 俺の見立てが間違ってるのかもしれない。あっくんに生霊を飛ばしてる奴は他にいるのかもしれない。

 最悪、神山のお母さんに払ってもらおうと言うと、あっくんは

「ともは大袈裟だなぁ。実害はほぼないし、大丈夫だろう」と笑い飛ばした。

 だけど、放って置いてあっくんに万一のことがあったら俺が嫌だから、毎日シミを散らすことと、土曜の練習試合を見に行くことは了承してもらった。




 そして、土曜日。今朝も、あっくんの体にはシミがあった。これで6日連続だ。今朝は、背中の高い位置にあった。いつもは足や腕だったから形がはっきりと分からなかったけど、あっくんの大きな背中に付いたそれは、どことなく掌のように見えた。

「今日も付いてたか?」

「うん」

 ことわってから背中を触ると、あっくんが顔をこっちに向けて聞く。

「痛みとかあった?」

「別にないな。毎日じゃ大変だろう? しばらく放って置いても……」

「それはダメ! 痛みはなくても、違和感はあるって言ってたでしょ!」

 少し強めに反論すると、あっくんは呆れたように笑って「じゃあ、今日はよろしく」と、軽く頭を叩いた。

 あっくんへの影響は少ないからと言って、放っておけるモノじゃない。いつも助けてくれるあっくんを、今度は俺が助けるんだ!

 そんなことを考えていたせいか、今日の授業はほとんど頭に入らなかった。

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