「菅原先輩は覚えてるか? 撮影会の時に案内してくれた副部長だ」
「はっきりとは覚えてないけど、何となく分かる」
「そうか。飯食ったら菅原先輩と合流して行くことになっている。お前も行くなら、一緒に行くか?」
「そうだね」
1人で練習試合の見学をさせてくれと言うだけでも、俺には結構なハードルだ。体育館に行く時だけでも、神山と一緒だと心強い。
「菅原先輩にも、あの日一緒だった奴が来ると伝えておく」
「あ、うん……」
撮影会の途中で帰っちゃったし、会うのちょっと気まずいかも。でも、仕方がないか。
「そういえば、なんで山口は写真部に入らなかったんだ? 何かあったのか?」
心霊写真を撮ったからなんて、神山には言えない。
家で起きる心霊現象を、かたくなに認めない神山のことだ。心霊写真を撮ったなんて言っても、信じるわけがない。
「特に理由はないよ、いろいろ見て決めようと思ってたからさ」
「そうか」
「それより、あっくんの試験勉強にずっと付き合ってくれてたから、神山は部活に入ってないんだと思ってたけど、部活休んで大丈夫だったの?」
部活に入ることは推奨されているけど、強制ではない。神山は家が遠いから部活に入ってないんだと、勘違いしてた。
「ちょっと行きづらくて、試験勉強を理由に休んでいた」
神山は、少し困ったように言った。
「写真部に、何か問題でもあるの?」
「いや、問題ってほどじゃないが……」
神山は、俺の顔をしばらくじっと見た後、重い口を開く。
「撮影会の日に撮った写真、俺のにも白い筋が写った」
「えっ?」
「山口も同じような写真を撮っていたからカメラか場所に原因があるんじゃないかと思って、他のカメラでも撮らせてもらったんだが、やはり白い筋が映った」
「そ、そう……」
「他の奴が撮っても写らないのに、俺が撮ると写る。心霊写真だとか、俺に何か憑いているんじゃないかとか、面倒な話が持ち上がって。正直、月山に勉強を教えるのは、部活を休む良い口実だった」
神山が力なく笑った。
「あの、えっと……大変だったね……」
俺はなんとか言葉を絞り出しながら、神山の後ろをそっと見る。ラブラドールはじゃれ付いてくるハチの相手をし、秋田犬は、神山の横に伏せて待機モード。そしてシェパードは、落ち着きなく神山の周りを走っている。その様子を観察していると、警戒からというより好奇心で走っているように見える。人が通ると臭いを嗅ぎに行き、物音がすると走って行き、虫を見付けると追いかける。
それらの動きを見て、俺は確信した。
お前だろう、心霊写真の原因は!
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