「あのさ……」

「なんだ? 場所、移すか?」

 昼休みに声をかけると、待ってましたとばかりに聞いてくれる。まあ、昨日から不審な行動しっぱなしだったし、ずっと気にしてくれてたんだろう。

「ううん、ここでいい。それより聞きたいことがあって」

「どうした?」

「バレー部の練習って、部外者が見に行ってもいいのかな?」

 神山のお母さんが言っていた誰かの生霊の可能性。あっくんは人気者だ。誰にでも優しく気さくで、嫌われる要素はどこにもない。だけどそれは、クラス内でのこと。この前の試合、1年なのに、逆転劇を起こすほど大活躍した。だからこそ、バレー部の中であっくんをよく思わない人がいたとしてもおかしくない。

 あっくんについたシミからは、誰か全く分からないけれど、相手がいる所でなら、何か分かるかもしれない。もしかしたら、シミをつける瞬間が、見えるかもしれない。あっくんに伝えるのは、相手が誰か分かってからにしよう。

「なんだ? 入部希望か?」

「そんな訳ないじゃん」

「だよな。下手に練習見に来たら、入部希望と間違われるからやめた方がいいぞ」

「そっか……」

 外で練習する部活なら、少し離れた所からでも様子が見えるけど、体育館じゃそうもいかない。

「少しでもいいから、部活してるところ見たいんだけど……」

 しばらく黙って見つめ合う。あっくんの目は、事情を話せと訴える。もう少し詳しいことが分からないと話せないと、目で訴え返す。

「練習じゃないが……」

 あっくんは、仕方がないといった感じで大きく息を吐いて、バレー部の予定を教えてくれた。

「土曜の午後、ここで練習試合をする。ともも見に来るか?」

「うん、行く! ありがとう!」

 3日後の土曜日。それまでなら問題ないだろう。もちろん、それまでに探れるところは探るけど。

「あれ? 俺もってことは、他に誰が来るの?」

「神山だ」

「へー、意外。神山、バレー好きだったんだ」

「違う違う。練習試合の写真を撮るのにくるんだってよ」

「神山が? バレー部の練習試合の写真? なんで?」

「なんでって……運動部の写真は、写真部が撮ってくれるの、知らないのか? 今度の練習試合は記録写真っていうより、迫力ある写真を撮りたいからだって話だけど」

「えっ……」

 押し黙った俺を、あっくんは不思議そうな顔で見る。しばらく考えた後、やっと声が出た。

「神山、写真部だったの!?」

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