階段を降り切ったタイミングで、玄関チャイムが鳴った。少女とハチが、同時に俺を振り返る。

「はーい」

 いつもなら相手を確かめてから開くはずのドアを、なんの確認もせずに開く。ドアの前には、見知らぬ老女が立っていた。

 誰だろう? と考えていると、老女は深々と頭を下げ『孫がお世話になりました』と言った。

『おばあちゃん!』

 マッチ売りの少女が俺の脇を擦り抜け、勢いよく老女に抱き付く。老女は少女を抱きとめると優しく頭を撫で『小雪ちゃん。ちゃんとお礼を言わないとダメよ』と優しくたしなめた。そこで俺は、初めて少女の名前を知った。マッチ売りの少女じゃなく、小雪という名前の少女。

 小雪ちゃんは老女の隣に並ぶと『ありがとうございました』と言って、老女と一緒に深々と頭を下げてくれた。

 そして、2人はゆっくりと薄くなって消えた。


 やっと、帰れるんだね……


 俺の胸に、確信に近い思いが湧き上がった。

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