『すごい! 広くてきれいなお部屋!』

 部屋の約半分を締めるベッド。勉強机や収納ボックスに占拠されて、2人が並んで座るのがやっとなほどしか空いていないスペースに立ち、少女は手を組んで感慨深げに言った。

 狭くて汚くてごめん……

 演技だと、台詞だと分かっていても、思わず謝りたくなってしまう。

「こんなのしかなくて悪いな。スナック菓子でもいいかな?」

 あっくんが、持って来てくれたスナック菓子をパーティー開けにして置く。いつもはベッドに座るあっくんが、今は大きな体を勉強机に張り付けるようにして座っている。

『わあ、すごいごちそう!』

 少女が立ったまま、両手を広げて言った。あっくんは笑顔で空中を見ている。2人して噛み合わない芝居をしているようだ。

「ごめん、お待たせ」

「サンキュ」

 あっくんにお茶の入ったグラスを手渡す。

「良かったら食べて」

 盆の空いたスペースにスナック菓子を乗せ、お茶と一緒に少女の足元に置くと、俺はドアに寄りかかるようにして座った。

『暖かいお部屋。ごうかな食事。私、夢を見ているの?』

 少女が俺を見て問いかける。その瞬間、眩しい光に襲われた。光が弱まり、閉じていた目をゆっくり開くと、目の前の光景が変化していた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る