「家に帰るのか?」

「多分」

「マッチ売りの少女はどうなった?」

「そこにいる」

 そう言って、少し前を指す。

 あれからすぐ、俺達は来た道を帰っている。先頭を歩くのは、何故かハチ。ピンと背筋を伸ばし、決して走ることなく人の間を縫うようにしながら堂々と歩いている。ハチに続くのは、マッチ売りの少女。ハチを見失わないように、ぴったりと後ろを付いて歩く。その少女の少し後ろに続くのが、俺とあっくん。

 歩きながら、あっくんにさっきのやり取りを説明する。あっくんを『お父さん』と言っていたと聞いた時には顔をしかめていたけど、演技をしているようだと説明したら、納得してくれた。

「それで、家に連れて帰って、飯食わしてやるのか?」

「飯じゃなくてもいいと思う。一昨日は、あめ玉がパンに変わったし」

「そうか。それより、家に幽霊を連れて帰って、大丈夫なのか?」

「…………多分」

 連れて帰ってそのまま居付かれたら困るけど、その幽霊を連れて帰るのがハチなんだから、どうしようもない。ていうか、ハチって俺の眷属だよね? 俺のために働くのが仕事だよね? なんか、俺の方が働かされてる感じがするんだけど……。後で神山のお母さんに聞いてみよう。

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