「じゃあさ、あっくんが数学の教科書持って5組に行けば? 日山はノートを借りられればいいんだろ?」

「おお、そうだな! 山口、賢いな!」

 日山に言われても、あまり嬉しくない。

「よし! じゃあ急いで5組に行くぞ!」

「山口、急ぐぞ!」

「はあ」

 勉強を教えて欲しいのはあっくんと日山のはずなのに、何故かいつもメンバーに入れられる。まあいいかと思いながら、机から数学を出して教室を出る。


 キーンコーンカーンコーン……


 廊下に出た途端、鳴ったチャイムに足が止まる。


「悪い。教える時間がなくなった」

 神山が落ち着いた声で言った。

「まだ諦めない! 先生が来るまで、いや、小テストが始まるまで……」

 あっくんは、出てきた以上の勢いで4組に戻って行く。

「そうだぞ! まだ先生は来てないから、ノート貸して!」

「ダメだ。授業が始まる」

「かーみーやーまー……」

 悠然とした足取りで5組に戻る神山と、その後を追う日山。神山の後ろを歩く犬達も、どこかのんびりした足取りだった。

 慌ただしく教室に駆け込むクラスメートに混じって席に戻る。悪霊の心配はなくなったけど、小テストの心配が残ってしまった。ふとあっくんの方を見ると、諦め悪く、隣の席の女子に教えてもらっていた。


 その後、ハチは学校内で姿を現さず、平和に1日を終えた。

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