「そうっすよねー。お化けだって、いいお化けもいるかも知んないのに」

 あっくんがうんうんと頷く。お母さんはちらりとあっくんを見て、嬉しそうに微笑んだ。

「それに、ともが言ったんすけど……」

「何?」

「『面白い家だ』て、笑い飛ばしたんすよ。『リアルお化け屋敷』とも言ってました」

「リアルお化け屋敷って言ったのは、あっくんだろ!」

 思わず後ろから抗議する。言ってないことまで俺のせいにされるのは心外だ。

「ぷっ、あはは! 確かに、リアルお化け屋敷よね!」

 お母さんが明るく笑った。重たい空気が一蹴された。やっぱり、あっくんはすごい!

「最初はびっくりしましたけど、あんなにパンパン鳴ったら慣れますね」

「えっ? ……そんなに、鳴ってた?」

「はい。家に入った途端、すごいラップ音がしました」

 家鳴りじゃなくラップ音て言ったよ、あっくん。

「ごめんね……」

 お母さん! そこで謝るのおかしくないですか?

「おばさんがピザ買いに行ってくれてる時も、ポルターガイスト現象みたいなことあったんすよ。部屋の物がぶんぶん飛ぶほどの揺れで、大きな地震だと思ったら地震じゃなくて、トラックが通ったせいだって神山は言うんすけどね」

「そんなに……揺れた?」

「かなり」

「ごめんね。注意しておくわ」

 なんでお母さんが謝るんですか!? 注意って誰にどう注意するんですか!?

「はい。ほどほどでよろしくっす!」

 満面の笑みで答えるあっくんに、何故か俺は、嫌な予感がした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る