「大丈夫じゃないって! 絶対いつか倒壊するぞ!」
「そんなことはない。古いが手入れはきちんとしている」
部屋を片付け、何事もなかったかのように勉強を再開しようとする神山に、日山が詰め寄る。
日山はさっきのポルターガイストにかなりびびったようだが、その対象は怪奇現象のような不可解なモノではなく、家の倒壊という現実的なもの。
「いやだって、すごい揺れたぞ! 物はいっぱい飛んでくるし、窓もすごい揺れてたし……」
俺はじと目で肩の狐を見る。狐は俺の肩の上で、器用に後ろ足で耳を掻いていた。なんかその仕草が白々しい。
「2階が揺れ易いのは耐震構造のせいだ。倒壊なんかしない」
耐震構造で揺れるのって、マンションとかの高層階じゃなかったっけ? 2階じゃさほど変わんなかったような……
「そうなのか? 本当に大丈夫なんだな?」
「大丈夫だ」
「そうか。良かった」
日山はあっさりと納得した。こんな説明で納得するとは、呆れて言葉も出ない。
「それよりさぁ、さっきの揺れの原因はなんだ? 地震でもなさそうだぞ」
あっくんがスマホを見ながら問いかける。あっくんは日山ほど単純じゃない。耐震構造より、そもそもの揺れの原因の方が気になるようだ。
「地震じゃないなら、大型のトラックでも通ったんだろう。時々、地震がなくても揺れることがある」
地震でもないのに揺れることってあるのか? と考えていると『あるわよ』とごんちゃんが教えてくれた。
『家の構造や地盤の関係でね』
「へえー」
ごんちゃんの説明に思わず声を出してしまったが、神山はちらりと俺を見ただけで説明を続けた。
「昔から、この家はよく揺れていたらしい。調べてもらったこともあるが、問題はないと言っていた。心配ない」
『聖子がこの家に来たばかりの頃、大丈夫だって言ってるのにわざわざ専門家に調べさせたことがあるの。家も地盤も、問題なかったわ』
今度はうなずくだけにする。
『そもそも、家や部屋を揺れたように見せるだけで本当は揺れてないのよ。問題ある訳ないじゃない』
俺の肩の上でクスクス笑うごんちゃんを、じと目で睨む。
もっともらしい理由で説明する神山は、このいたずら好きの神様のことを知っているのだろうか? お母さんとあれだけ仲良く喋ってたし、やっぱり知ってて誤魔化してるんだろうなと考えていると、突然、ごんちゃんの口調が真面目になった。
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