「うわっ!」

 思わず声が出てしまい、慌てて口を押さえた。幸い、3人は本棚の本を見ながら何か話しているおかげで、俺が小さく叫んだのは聞かれなかった。だけど、俺が声をあげた原因には気付かれてしまった。


 部屋の真ん中に犬がいる、しかも3匹。


 少し透けて犬種が分かりにくいが、その特徴からラブラドール、シェパード、秋田犬と推測する。のんびりと寝そべっていた3匹は、俺が声を上げると一斉に頭を上げ、俺を見た。寝そべった体勢のままとはいえ、その鋭い眼差しから警戒されているのを感じる。同時に、この犬達が何なのかを理解した。


 神山に取り憑いていた白い光。


 以前は見えなかった姿がはっきり見えることを不思議に思いながらも、目を逸らす。いつもはこれで向こうも気を逸らしてくれていると思い、視線を移動させた先にそれを見た。


 これ、霊道ってやつだ。


 ベッドの1メートルほど上、足元の壁から入って窓の端にかかりながら外に抜けて行く不思議な筋。

 ほんと、なんなんだこの家は。子供に大人に犬に霊道。ありえないほどなんでもある。そして、見えない人にも分かるほどの怪奇現象が、頻繁に起こってる。

 よくこんな家に住んでいられるなと、呆れ半分感心半分で神山に視線を向けると

『悟をいじめるな!』

 少年がいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る