「ありがとな、神山。おかげでずいぶん勉強が進んだ」
「そうか」
あっくんの礼に、神山は素っ気なく答える。
「神山ー! 英語の課題、終わんなかったー」
「家で頑張れ」
日山には素っ気なさに加え、冷たさまで感じる。
「あの……神山、今日はありがと……」
俺も何か言わなければと礼を言うと、神山の鋭い視線が俺に向く。
「山口には何もしてないが?」
なぜだろう。神山に見られると、やっぱり寒気がする。俺は視線を合わせられなくて、俯いたまま返事をする。
「あ、いや、今日付き合ってくれただけですごく助かったし……」
「あの……」
「そうだぞー! 月山ばっかかまって、僕達はほったらかしだったぞー!」
日山が、何かを言いかけた神山を遮る。神山は不機嫌な顔で日山を睨むけど、日山に気にした様子はない。
「僕の課題が終わらなかったら、神山のせいだかんな!」
言ってることが無茶苦茶だ。こいつは小学生か?
「たまには自分でやれ」
「今日は頑張ったぞ!」
「今日だけだろ」
しばらく睨み合った後、神山が諦めたように息を吐いた。
「出来なかったら明日教えてやるから、もう少し頑張れ」
「うん!」
日山が嬉しそうに笑う。この2人、意外に仲が良いのかも。
玄関を出て、2人と別れる。俺とあっくんは自転車通学、神山と日山は電車通学。
「じゃあな、また明日」
「また明日ー!」
俺達が軽く片手を上げると、日山は両手をぶんぶん振って返事をする。神山も軽く手を上げた。
「あっ、ダメだ!」
日山が、両手を上げたまま止まる。
「明日は部活の日だから、僕と山口は図書室に行けない!」
慌てる日山に対し、神山は「そうか」と素っ気ない。
「神山はどうだ? 明日もいけるか?」
「いいよ、暇だし」
あっくんが尋ねると、神山はあっさりと返事をした。
「なら明日は2人だな。よろしく頼む!」
「ああ」
仲良く並んで帰る日山と神山を、少しだけ見送る。神山は素っ気ないが、普通の奴だと思う。離れた所から後ろ姿を見ているだけなら、寒気を感じない。神山がまとう光も見えない。
「神山がどうかしたのか?」
「えっ?」
「ずっと神山を、避けてなかったか?」
付き合いの長い幼なじみは、俺の不自然さに気付いていたようだ。
「神山と何かあった? それとも、神山に何かあるのか?」
あっくんは、いつも俺を心配してくれる。他人には見えないモノを見てしまう俺を、いつも気遣ってくれる。
俺は少し迷ってから「何でもない」と答えた。
寒気も、光の正体も分からない。だけど、俺以外に影響があるようにも思えない。何より今は、あっくんの勉強の方が問題だ。
「そっか、ならいい」
ぽんと優しく頭を叩き「何かあればちゃんと言えよ」と歩き出す。
俺も「うん」とだけ答えて後を追った。
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