「彼だ」
窓際の一番後ろの席の男子を指差して、日山は言った。男子は退屈そうに窓の外を眺めていて、顔は見えない。
「待たせたな、神山」
日山が声を掛けると、男子がこっちを向いた。長めの前髪に半分隠された少し吊り上がった大きな目が日山を見て、ドアから中を覗いている俺達を見た。
その瞬間、ぞくりと背中が寒くなった。
何かいるのかと思って、廊下を見回す。おかしなモノは何もない。
「彼が英語を教えてくれる、神山悟だ」
きょろきょろしていると、日山が神山を連れて戻って来た。
日山より、ずっと高い位置にある神山の顔を見上げて、それを見た。神山を囲うように走る数本の白い光。
何かが憑いてる。
呆然と見ていると、その光は走る速度を増していく。同時に、軽い寒気は悪寒に変わり、背中を駆け上る。
神山が纏う光が何なのかは分からないけど、これ以上神山を見るのは危険な気がして、神山から視線をそらした。
「山口? どうした?」
突然俯いた俺に、日山の不思議そうな声がかかる。神山も俺を見ているのだろう。悪寒はさらに強まり、腕まで広がってきた。
ズボンの上からポケットを探る。大丈夫。お守りはここにある。
「悪いな、神山。ともはちょっと人見知りするんだ」
どう返事をしていいか迷っていると、あっくんが代わりに答えてくれた。
神山の興味が俺からあっくんに移ったせいか、悪寒が少しだけマシになった。
「そうか。確かに僕ともあまり目を合わせないからな」
なぜか、日山が納得している。
「俺は4組の月山暁人だ。面倒をかけて悪いな」
あっくんが、日山を華麗に無視して神山に笑いかける。
「神山は学年トップクラスの成績で、英語も堪能だからな。僕が頼んだ」
「気にしなくていい。どうせ暇だ」
「恩に着るぜ。じゃあ行こうか」
あっくんが、神山を連れて歩き出す。あの寒気は消えてくれたけど、さっきのこともあって、まだ神山を直視できない。
「ほら日山、俺達も行こう」
2人に完全に無視され、胸を張ったまま固まっている日山に仕方がなく声をかけ、少し遅れて歩き出した。
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