第7話 スライムを殺すなら一秒だって無駄に出来ない!

「スライムは千切れやすいんです。欠片になったスライムは、運と条件が整えば再生します。そうなるとやっかいです」


 タイガが冷静に説明する。

 つまり、一体が攻撃で千切れると、それぞれがスライムとして再生する可能性があるということか。


「炎で炭にしてしまえば、再生することもありません」


 なるほど、メモしなきゃ。

 メラメラと燃える炎。

 タイガは残った一本のタイマツをその炎に触れさせた。

 タイマツに火が着いた。


「行きましょう」


 タイガはスライムを焼き尽くす炎に踵を返し、スタスタと下に向かう階段へと歩いて行った。

 恐らくドワーフが作った階段なのだろう。

 それはそれでいいんだが……


「あの、ちょっと……、火は消さないでいいんですかっ!?」


 タイガは驚く私に振り向かずにこう言った。


「スライムは確実に死にました。火を消している時間も、地下深くでスライムが増殖しているかもしれません。僕には時間がありません」


 私を置いて階下へと向かうタイガ。

 そんなにスライムを沢山倒したいのか。

 だけど、そんな滅茶苦茶な。

 火を消さなかったら洞窟の中が火事になる。

 出口まで火が回ると私達も出れなくなる。

 ドワーフが採取する鉱物だって影響を受けるだろう。


「何してるんですか! 死にたいんですか! 早く来てください!」


 階下からタイガの声が響く。

 はいはい。

 分かりました。

 スライムを倒すこと以外は、すごく自分勝手な奴だなあ。

 私は階段を一歩一歩降りる。


メリメリメリ……


「何の音?」


 背後で音がする。

 振り返ると先程、私達がスライムと戦っていた場所。

 その場所の岩で出来た天井が崩れ始めていた。


ゴゴゴガガガガ!


 天井が崩れ岩が炎を鎮火した。


「……タイガさん、天井がっ、ほっ……崩落しました」

「命拾いしましたね」


 一命をとりとめた私にタイガは冷静にそう言った。


「知ってたんですか?」


 天井が崩れることを……


「はい」


 焦る私に冷静に応えるタイガ。


「スライムを叩きつぶしてる間に、衝撃波の魔法を天井に仕掛けておきました」

「す、すごい」


 彼が棍棒を振り回している間、そんな魔法を仕込んでいたなんて気付かなかった。

 ……って、待てよ。


「タイガさん、やばいですよ」

「何がですか?」

「さっき、天井が崩落したことで私達の来た道が岩でふさがれたじゃないですか!? もう戻れない! 一生、この洞窟で過ごさなきゃならないじゃないですか!」


 私は目の前が真っ暗になった。


つづく

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