第3話 押し掛け治癒魔法使いの少女は、雑用係と強引にパーティを組みました。

「僕はパーティを組まない主義です」


 私の願いはあっさり断られた。

 そりゃそうかもしれない。

 知らない人間がいきなり押し掛けて、仲間にしてくれって言って来たら私だって戸惑うし、きっと断る。

 だけど……


「私、スライムを殺したいんです!」


 思わず口から出た言葉は、あの日から私の脳内に刻み込まれた生きる目的だった。


「……どうしてスライムを殺したいんですか?」

「え?」


 いきなり問い掛けられても……

 だけど、タイガの顔はすごく真面目だった。

 そう、私がそんなことを言う理由を知りたがっている様な。

 そして、私の思いは止まらなくなった。


「私の両親はスライムに殺されたんです! だから、復讐をしたいんです! この世界に湧いている全てのスライムを殺してやりたいんです!」


 初対面の人に何て重い話をしてしまったんだろう。

 後悔先に立たずだ。


「そうか……」


 タイガはポツリとそう言った。

 彼の瞳はさらに悲しい色を帯びた……様な気がした。

 どうしてだろう?

 さっきから私には彼の気持ちが何となく分かる。


「僕は自分の戦いに誰かを巻き込みたくない。だから、パーティを組まない」

「はい……え?」


 どういうこと?

 モンスターと戦うならパーティを組んだ方が有利だし……そりゃ、ソロの方がドロップしたアイテムは独り占めできるけど危険だ。


「じゃ……」


 彼は踵を返し歩き出した。

 

「ちょっ……ちょっと、待ってください!」


 あの人ってば、歩くの速い!

 私はローブの裾を摘まみ上げ、ダッシュする。

 街の中で周囲の人の目も気にせず、あたふたとしながら彼を追い掛ける。

 ここで逃がしてはならないと、私の想いが私の身体を動かす。


「私じゃ足手まといだって言うんですか!」


 私は彼の前に立ち塞がる。

 彼の行く手を遮る様に。


「そういうつもりじゃ……」


 私は息を吸い込み、大声で訴える。


「初めての戦闘で、私はスライムを前にしてビビってしまいました。何も出来なかったから私はパーティをクビになりました。だけど、今は……今から変わります! 絶対! だからっ……」


 同じ目標を持った人が現れたこと。

 その人のことが、まだ何となくだけど理解出来る。

 私はこの出会いを逃してはならないと思った。

 彼は鼻から息をつき、仕方なさそうにこう言った。 


「分かった……君が僕に着いてくるのは君の自由だから」

「は、はい……」

「これだけは約束して。自分が助かることだけを考える事。戦闘でどうしようも無くなったら僕を置いてすぐ逃げて下さい」

「けど……」


 それって……


「それが君が僕とパーティを組む条件です」


つづく

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