それも3年間みっちり


「あー、お姉さまにも見せたかったわ」


帰ってきた妹が恋人のグレンと共に私が今日一日過ごしているサロンに顔を出した。

私たちは年子とは思えないくらいそっくりだ。

ただし化粧して着飾ったら、の話。

多少の色合いは違うものの、姉妹だからこそのだ。

そして残念ながら身長は私より妹の方が高い。

グレンを間に挟むと、私の頭はグレンの肩より少し上。

でも妹の額はグレンの口の位置。

だからいつも妹の額にグレンは口付ける。

小さい頃は「私にも!」と言っていたが2人が恋人になったときから言わなくなった。

私にも恋人ができたからだ。


「私の経歴に王子との婚約破棄もどきがついてしまったわ」

「それは滅多にない肩書きだ! 堂々と胸を張りなさい」

「こんな私でももらってくれますか?」

「滅相もない! 私の肩書きを積み重ねても足りないくらい素敵な女性だ。私のほうこそ嫁に来てもらえるか?」

「ええ、もちろん!」


私の恋人は学園の教授。

互いに議論を交わし、意見をだしあい、そして同じ解答にたどり着いた。

一年間繰り返し、進級と共に私たちは恋人となった。

そして3年制の学園を卒業すると共に私は彼の苗字を名乗り、新学期から母校で教鞭を振るう。


「元王子の言葉からお互い気になりだしたんだもの。恋のキューピッドよね」

「実は『2人の結婚が来年行われるために出てもらいたかった』とお伝えしたんですよ」

「2人とも。まるで私とグレンが結婚するみたいじゃない」

「あら、私たちだってお姉さまの一年後に結婚しますわよ。それも来年の末、卒業の翌日に。お姉さまは今年の卒業後でしょう?」


私たちの話に弟たちが口を尖らせる。


「なによ?」

「学園に入ったら、僕たちは義兄にいさんと姉さんに叩きのめされるんだぜ」

「それも3年間みっちり」


私だけでなく、才女の誉れ高い妹も学園で教授になり、グレンも騎士科で剣術を叩き込む。

嘆く弟たちの様子に兄たちは苦笑する。


「あー、俺たちはコイツらより年上で良かったな」

「ええ、まったくです」

「「2人して立場が逆だったよな」」


兄たちは学業より当主や領地経営を集中に勉強してきたため、もし逆の立場だったらと思うと背筋が凍る思いだ。


「今から交代するか?」

「今は女当主も認められるのですよ」


両親のからかいに2人の兄は無言で首を左右に振った。

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