第2話 ギルド:パルテノン
学校で魔法が学ばれている現代。
小中学校で化学の代わりに魔法を習い。
高等学校で体育の授業で剣・銃術を習い。
大学・専門学校でより実践的な扱い方を学ぶ。
魔法や剣術のランクは資格化され、より高位の資格を有するものは、いい会社に入ることができる。
大体が学生のうちは色々な資格を取り、専門的な資格は大学や専門学校で受けるといった流れになる。大概はどのような人材でも資格を習得できるように募集は多くとっている。
今の時代学費も安く成っているので9割以上が大学や専門機関に入るのだが・・・。
「受かってない!」
自室のベットに倒れ込みながら、携帯の液晶画面に映し出されている大学不合格の通知書に目をやる。受けた大学はそのまま名前を書くだけでも合格できる時代。そんな中で不合格になるのは逆にレア中のレアだ。
「これも、これも滑り止めも受かってなぁあああい!」
僕は叫ぶだけ叫ぶと
「まさか! あの野郎やりやがったな!」
体を起こし僕は左手をかざす
「出てこいデルフィスト!!」
叫ぶように声をあけた。
すると床に紫電光が発生し、中から男装の麗人の姿が現れる。
「やれやれどうしたのかな? 坊ちゃん?」
「坊ちゃんはやめろ! お前最近何か変わったことなかったか?」
「ん? どれのことだろう検討もつかないが、最近だと|選択肢が出てきな。教えて欲しかったのか?」
「当たり前だ! わかっていたとしても、絶対合格とまでいわれた滑り止めで受けた大学まで不合格はキツイんだよ!」
そうこの結果を知っていたのならば、少しはこっちも気持ちの持ちようがある。
「やれやれそこで純粋に実力不足だったとは考えないのかな?」
「うぅ」
僕が言い返されずにいると、デルフィストは
「んー私的には無断な努力をしているのは大して思しろくもなかったけれどな」
といった。
「っく。この!」
僕が掴みかかろうとすると体をすり抜けて向こうまで通り抜けてしまった。
あいつはベットの横にただづみ。
「君も学習しないね」
学習机に腰をかけた。
僕に嫌味を言うのは10年前に僕に契約を押し付けてきた悪魔だ。
あいつは懐から大きなタブレットのようなものを取り出し、僕に見せつけた。
悪魔デルフィスト定めた契約
1つ、今ある資格は全て封印。
2つ、新規に資格を習得することはできない
3つ、悪魔は契約者の未来をターニングポイントで複数の選択肢から決めることができる。
4つ、お互いに直接干渉できない。
5つ、この契約は等価交換の対価が終了するまで継続する
タブレットにはそのように書かれている。
ここまでくればわかるだろうか。
この性悪悪魔、契約③『ターニングポイント』大学に進まない選択をしやがったのだ。
「ああーもう! で! お前はターニングポイントで何を選択したんだ?」
「んー? そこは何も知らない方が面白くないか? 自分の人生を知っていると絶対に後悔するぞ。前の君ならそう言っていた」
デルフィストはこれまたタブレットを弄りながら、興味なさげに告げた。
今までの傾向からターニングポイントには複数の選択肢が存在していたらしい。
「いいんだよ。どうせ僕はキャラクターお前がプレイヤーなんだから」
そうあの日僕はレア資格だけじゃなく人生の選択肢を失った。
人生はいくつものターニングポイントがある。
それを実行する権利を僕はこいつから奪われた。
それが『契約⑤この契約は等価交換の対価が終了するまで継続する』になる。
でも命の代償が人生ってちょっと壮大すぎないか?
「そうそう卑屈になるな。君が楽しい人生を送るほど私は満たされ、等価交換の契約もなくなるってものだ」
「っち。で悪魔様。僕は何の職業につくことになるのでしょうか」
こいつはただ僕という玩具で遊びたいだけだ。
僕というキャラクターを悪魔というプレイヤーが動かしたい。
「冒険者だ」
「は!?」
「だから冒険者だよ。一攫千金。億万長者。大富豪。ここいらで呼ばれてるのは全員冒険者だ。いいじゃないか夢のある仕事につけれるぞ」
「その代わりに命をかけろと! スキルもなしに?」
「いいんだよ。そっちの方が面白い」
どうやらこの悪魔はとことん僕で遊びたいようだ。
そしてこれがまさに僕のターニングポイントだった。
『ダンジョン』それは人類が資源を確保するために必要な『魔石』を入手するために、モンスターを人工的に作り出す施設の総称だ。
基本的に階数を重ねる度にモンスターも強くなり、ドロップする『魔石』もより良いものになる。
時にはレアドロップをすることもあり、冒険者はそれが目当てで毎日、時には何日も『ダンジョン』にこもることもある。
そんな一攫千金を目指してやってくる猛者たちのサポートをするのが通称サポーターだ。
サポーターの仕事は多岐にわたる。『魔石』の回収や荷物待ちに始まり、安全な帰還ルートの確保。『ダンジョン』内のマッピング。はたまたレベルにあった狩場の提案なんかもサポーターの仕事だ。
僕はそのサポーターになった。
なぜか大手企業であるパルテノンに内定がもらえ、そこにいる先輩たちのサポートを一手に引き受けることになったのだ。
僕は必死にダンジョン内の地理やモンスターのレアドロップアイテムを暗記し、なけなしのお金で身の丈もある大きな専用のバックパックを買った。
そして、本日意気揚々とパルテノン日本支社に来たはいいものの。
「でかっ!」
僕が下から見上げると階段の上にあったのは、白を基調とした純白の神殿だった。等間隔に配置された純白の柱は細部まで彫刻が施され、神聖な雰囲気をかもし出し、天井には魔術的要素もあるのだろうか、所々に魔石が埋め込まれ明るく光り輝いている。
上から見たら長方形の形をしているこの建物は、幾多にも結界が張られており警備も日本のダンジョンとは比較にならないくらい強固だ。
「ふぇー」
外観を見て思わずため息が出てしまった。
都内の敷地にこんなものを立てるなんて、パルテノンはすごいな。
僕は少し興奮しながら、中に入っていった。
一階にはカウンターと掲示板が設けられており、ここからクエストを受注するようだ。
僕が中に入り、奥に進もうとするとカウンターに座っていたお姉さんがこちらに声をかけてきた。
「ねえそこのぼく。ちょっといいかしら?」
「はい?」
突然のことで変な声が出てしまった。
受付のお姉さんは少し怒った様子で僕に言う。
「冒険者の子よね。ダメよ、しっかり入場料を払わないとダンジョンには入れないんだから」
「へ? いや、僕は」
「いやでも、そうじゃなくても、みんな払っているんだからダメよ? 君だけ特別扱いできないの」
彼女はさらにこちらに詰め寄る。カウンター越しでなければ、当たっていてもおかしくない距離だ。
「ほら、入場料とここに手を乗せて」
受付のお姉さんが優しい口調で語りかけ水晶を持ってくる。
まるで迷子の子供に語りかけているようだ。
「ぼ、僕は! き、今日からお世話になります。新入社員の橘ワカバです! 冒険者じゃありません!」
「え?」
これで、誤解は解けてもらえただろうか。
しかし受付のお姉さんは少しの間考えたそぶりを見せると、今度は顔を青くしていった。
「まさか、君が……ぼく? 配属する課は何?」
「、サポーター課:第三室ですけど……」
お姉さんの顔がますます青くなったかろと思うと、急に真剣な顔をした。
き、急にどうしたのだろうか?
「君、悪いことは言わないから、今すぐここから逃げなさい」
「へ?」
何を言っているのだろう。
しかし、お姉さんのは冗談を言っているようには見えない。
「だって君の……」
お姉さんが真剣な顔で何か言おうとしたとき。
「お待たせしてしまったようですね」
「瀬戸内さん!」
後ろから、身に覚えのある声がかかる。
そこに立っていたのは、人事部長の瀬戸内さんだった。
「何かトラブルでしょうか?」
瀬戸内さんが受付嬢のお姉さんに聞く。
その声に受付のお姉さんがビクリと体を震わせた。
しかしお姉さんが震えたのは一瞬で、すぐさま冷静な顔をした。
「いえ。なんでもありません」
お姉さんは僕に悲しげな視線を向けたかと思うと、すぐさま平然とした顔をする。
え、どうしたの。
「この子を冒険者の方と見間違えてしまったのです。橘さん申し訳ありません」
「い、いえ。大丈夫です。」
なんだかすごい気になることを言いそうだったけれど。
僕が何を言おうとしたのか聞きたくて、再度聞こうと口を開こうとした瞬間。
「では、参りましょうか。橘くん付いてきてください」
「は、はい」
僕の質問は瀬戸内さんに促され、聞くことができなかった。
慌てて後をついていき、ふと後ろを見ると、やっぱり受付のお姉さんは悲しそうな顔をしていた。
「ここが橘くんの所属する部署になります」
瀬戸内さんにうながされて来たところは、扉に『サポート課:第3室』と書かれていた。
扉を開けると、そこは現代風の綺麗なオフィスだった。
一眼見ただけでわかる高級なソファー。品格のある新品のディスク。全面ガラス張りの高級感漂う空間に僕は入るのをたじろんでしまった。
流石にこの空間は落ち着かない。
応接室も付いているのか、扉がその他にもいくつか存在していた。
しかし現在の時間は10時。オフィスにはいないように見える。もうダンジョンに潜っているのだろうか?
「あちらが、応接室。それでこちらが部長室。部長以上になると個室が与えられます」
「はぁ」
正直、つい先日まで学生だった僕には、落ち着かない部屋だった。
瀬戸内さんはオフィスの一角にある扉の前に立つと、僕に説明する。
「まずは部長へ挨拶して、そのあと早速仕事に取り掛かっていただきます」
「は、はい」
そういうと瀬戸内さんは、部長室と書かれた扉をノックする。
すると中から、若い声で「どうぞー」っと声が聞こえてきた。
き、緊張してきたー。
僕は勢いよく扉を開けると、声をあげお辞儀をする。
「失礼します。このたびこちらの部署に配属になりました、橘ワカバと申します」
「はいよー。話は聞いてるよー」
顔を上げるとそこには。
「え、子供?」
スーツ姿の中学生くらいの女の子がいた。
だいたい妹と同じくらいだろうか。
スーツを着くづして、スカートも短い。髪も傷んだ金髪をしている。
まるで不良ギャルな容姿だ。
「おい、初対面で失礼なやつだな。クビにしてやろうか?」
「し、失礼しました」
慌てて、もう一度頭を下げる。
やばい、すっかり気をぬいていた。
彼女は机に肘をつき、つまらなそうな顔をしている。
「このたび配属になりました橘ワカバです。よろしくお願いします!」
慌てたもう一度挨拶をする。
すると呆れたような声が僕の耳に届いた。
「はいはい。私がこのサポート課:第3室、室長兼部長の九倉塚あおいだ。あおりんと呼んでもいいぞ」
「は、はい。あおりん部長」
「気安く苗字で呼ぶなよ。呼んだら百回殺すぞ」
「は、はい!
とりあえず個性の強い人だということはわかった。
心の中ではギャル部長と呼ぶことにしよう。
彼女は不機嫌なまま今度は瀬戸内さんに質問する。
「瀬戸内。この子が新しい『生贄くん』?」
「社員です。九倉塚部長」
「だから呼ぶなっつてんだろうが」
ダン!!
部長がそういった瞬間、瀬戸内さんがいた後ろのドアに風穴が空いていた。
あらためてギャル部長をみると右手に白い装飾銃を構えている。
銃痕の先にいる瀬戸内さんはその場から微妙だにもせずケロッとして鞄からファイルを取り出すと、ギャル部長に差し出した。
「っち! 素直に死んどけボケが」
ギャル部長はファイルを受け取るとパラパラとめくり始める。
「にしてもなかなかお前たちも薄情だなぁ。毎回毎回どこで見つけてくるのか」
「九倉塚部長こそ、ここは会社です。節度ある態度でお願いします」
ダダン!
今度は壁に穴が二つ増えた。
部長もですけど、瀬戸内さんも煽るのをやめてください!
「っち。こんな
彼女はパラパラとファイルをみると
「ハイじゃ。橘今日からお前はパンテオンの一員だ。とりあえず生き残ることを考えろ! 以上! なにか質問はあるか?」
とりあえず色々言いたい事があるるがその前に・・・。
「あのー」
「ん? なんだね。ワカバ、何か質問があるんか?」
僕が手を上げると、部長が返す。
その顔は何かニヤニヤと笑っている。
「い、生贄ってどういうことですか?」
「ああ、君は何も知らずにここにきたのかね。ダメじゃないか瀬戸内、ちゃんと説明してあげなきゃ」
部長は椅子から立ち上がると、さっきとは一転、楽しそうに説明し始めた。
いきなり笑顔になるものだがらなんだがとても不気味に見える。
「15人だ」
「はい?」
「君がくるまで、ここ一ヶ月に来た社員の数だ」
15人? でもオフィスには誰もいなかった。
だから全員ダンジョンにこもっているのだろうと思った?
そう思っていると、彼女の説明が続く。
「君の他にも配属されていた先輩はいたんだ。しかし、今はいない」
「みなさん、ダンジョンにこもっているということですか?」
でもそれにしてはおかしい、オフィスには書類一つ置かれていなかった。
そうまるで使われていないみたいに。
ギャル部長は、楽しいそうに説明する。
そして、
「いや、誰一人ダンジョンから帰ってこなかったんだ」
「へ?」
「その後、全員死亡が確認された」
そしてそんなことを言い出した。
誰も、帰ってこない?
全員死亡?
いやだって……。
「ニュースとかじゃ何も報道されていなかったし・・・」
「そんなもん揉み消した決まってるんだろ。それでなければ、君みたいな無資格者がうちに来れるはずがない」
そういう彼女の顔は真剣だった。
「いやー人事も君みたいな、身寄りのない『生贄』を毎回拾ってくるから大したもんだ」
いやいやいやいや
「とりあえず橘ワカバくん入社おめでとう! そして、ようこそ! 生存率0パーセント通称『サポーターの墓場』へ! 私は君を歓迎するよ」
彼女は、両手を広げ僕を歓迎する。
その顔はあの悪魔の笑みに近いものを感じた。
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