第14話  幼少期④

 幼稚園の話を聞いた瑠美子は以前、颯斗が変わった行動をする事があり疑問に思っていた事を思い出した。でも初めての子どもであり、女の瑠美子はしなくても男の子の行動では、こういう事もあるのかと、その時は余り気にはしていなかったと言う。


 ある日、瑠美子がいつものように幼稚園バスを降りて、他のご家族に挨拶して家に帰る道を颯斗と抱っこしている優斗と三人で歩いていた。帰る途中には小さな公園がある。そこにはブランコと小さな砂場、パンダと像の乗り物が置いてあり、幼稚園から帰ると必ず三人で遊んでから帰るのが、いつの間にか日課になっていた。

 優斗がまだ歩けない時はベンチに座り、颯斗がパンダに乗ったりブランコで揺られるのを見ている事が多かった。何日か公園で過ごすうちに颯斗の行動が毎日、同じ行動をするのが解った。初めにパンダに乗り前後に5回程度揺らすとパンダを降り、次はブランコに座る。ブランコも数えたら5回程度で降りていた。5回は直ぐに終わるので、この時は幼稚園の帰りで疲れてるのかな、なんて思いながら颯斗を見ていたとの事。暫くすると、優斗がブランコに乗りたいのか颯斗が乗っている時に必ず、両手をブランコの方に伸ばしていたので、瑠美子が優斗を抱えながらブランコに座り、前後に動く。すると膝に抱えた優斗が楽しそうに喜んでいた。乗り物の後の颯斗の行動は虫を観察する事。公園内の植木の傍にしゃがみ込み、蟻やダンゴ虫、ミミズを落ちている枝を使って捜している。そう言えば、前に俺が颯斗は昆虫博士になるかもな、なんて言ってた事を思い出したと言う。颯斗の行動を毎日見ていた瑠美子も同じく昆虫博士あるかもと思ったらしく、二人共親バカだわ、と思いながら優斗と一緒にブランコに乗りながら笑っていたらしい。

 そんなある日、もう日が暮れてきたので帰ろうと颯斗の傍に行く。

「颯斗、暗くなる前にか…。えっ?」瑠美子は目の前の光景に言葉を失っていた。

しゃがんでいる颯斗の前にミミズが四等分に切り刻まれていた。それよりも酷かったのが蛙の姿だった。アマガエルに木の枝が上から刺さり土まで達していた。そのため蛙は逃げる事が出来ずにいた。まだ息はあるようで後ろ足が少し動いていたと言う。その蛙の足を颯斗が手で持っていたところを瑠美子が見て

「…颯斗、何してるの?」と声を掛けた。颯斗は持っていた蛙の足を離し、瑠美子の方に振り返り、こう言った。

「蛙さんが足が痛いって。怪我してるみたいだから見てあげようと思ったの。」と。瑠美子には蛙の足をもぎ取ろうとしていたのではと一瞬思ってしまったが、颯斗は治してあげようとしていたと言うなら、

「…そっかぁ、蛙さんの足を見ようとしてたんだね。でも、颯斗はお医者さんじゃないから治すのは難しいと思うよ。」とアドバイスした。すると颯斗は

「そうか、僕では治せないって。蛙さん、お家に帰って休んでくださいね。」と刺さっていた枝を上から引き抜いた。その光景に瑠美子は背筋が凍る思いをしたという。

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