第12話  幼少期②

「幼稚園の先生から電話があったの。」

「昼間?」

「そう。たぶん、お昼寝時間だったと思う。」

「それで内容は?」

「うん…幼稚園で飼ってる魚がいるんだけどね。」

「あぁ、廊下にあった水槽に金魚とかメダカがいたな。」

「そう、それ。餌を上げるのは子ども達なんだって。二人組になって先生と一緒にあげるらしいの。」

「そうなんだ。生き物の世話係なんて良いな。家でも何か飼うか?」と言いながら呑気にビールを飲んだ。

「もう!ちゃんと聞いて。この続きが大事なんだから。」

「あ、ごめんごめん。」

「先生によると、魚が徐々に減って、あと数匹しか残っていないみたいなの。それで最初はいなくなっていく事にみんなが気付かなかったらしいの。しばらくして、一人の女の子が。『先生、お魚さん、今日は少ししかいないんだね。』って言って気が付いたみたいで。」

「死んじゃったとかじゃないのか?」

「死んだら先生が気が付いて処分するでしょ。先生よりも子ども達が気が付くわよ。でも、死んじゃってるなんて教えてくれた子は一人もいなかったし、魚を処分した先生もいないってなって。」

「それは摩訶不思議な話だな。ってそれと颯斗が何か関係してるのか?」

「実は颯斗の世話係りの日になると一匹ずつ、魚がいなくなるんだって。」

その言葉に俺は飲んでいたビール缶を落としそうになった。

「え、どういうこと?」瑠美子が溜息を付きながらキッチンに行き、喉が渇いたのか冷蔵庫から出した麦茶をグラスに入れて、立ったまま一口飲んだ。

「それから毎日子ども達が帰った後に魚の数を数える事になったんだって。そしたら颯斗の当番の日の夕方に必ず、一匹いなくなるって。」

「だからといって颯斗が何かしたって証拠はないだろ。」俺は少し怒りを覚えた。

「私もその話を聞いた時はそう思ったよ。でもね、先生だってまさか魚に手を加える子どもがいるなんて思わないわよ。」麦茶の入ったグラスを持ち、瑠美子がソファに腰かけた。

「だいたい、餌を上げる時は二人組になってあげるんだろ?もし颯斗が魚に手を出したとしたら一緒に餌やりした子が見てるだろ。しかも先生も一緒って言ってたじゃん。そしたら颯斗が何かしてる時に注意出来るはずだよ。」

「それが、先生も一緒にあげた女の子達も颯斗が何かしたのを見た人が誰も居なかったのよ。」その言葉に益々、怒りが込み上げてきた。

「じゃ、なんで颯斗だって決めつけるんだ。」

「まぁまぁ、落ち着いて。話には続きがあるんだから。」瑠美子は落ち着いて話しているが俺の怒りは静まらなかった。

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