第11話 幼少期①
桜が咲く季節になり、颯斗の幼稚園が決まり、今日は入園式だった。真新しい園児服と肩掛け鞄をかけると、成長したなと実感する。
「おぉ、颯斗、カッコいいな。きまってるぞ。」と親父が颯斗の写真を撮っていた。
「お義父さん、お義母さん、優斗をお願いします。」
「優斗は任せて。帰ってきたら颯斗のお祝いしましょうね。」
「ありがとう。じゃあ、行ってきます。颯斗、じぃじとばぁばに挨拶は。」
「行ってきます。」と颯斗が手を振った。
「おぉ、颯斗、頑張れ。」と親父とお袋、親父に抱っこされてる優斗が見送ってくれた。
入園式も無事に終わり、明日からは颯斗の幼稚園生活が始まる。それをきっかけに俺の育児休暇も終わった。また明日からは満員電車に揺られて仕事だ。休暇が長かったから身体が訛っているのが分かる。でも家族の為に頑張るぞと気合を入れる。
優斗の夜泣きもだいぶ減り、朝は皆で食事を囲む。俺は颯斗を幼稚園まで送り、そのまま会社に出勤する。夕方は幼稚園バスに乗って帰って来る。それが日課になっていた。幼稚園生活も慣れ、颯斗にも友達が出来た。瑠美子もママ友が出来て、帰りのバスを待っている時は色々な話をするようになり、ママ友との付き合いも増えてきているように見えた。近所付き合いも大事だ。
俺は休暇を取っていた分を取り返そうと、企画書を上司に提案していた。それが通れば俺の主導の下で新たなプロジェクトを立ち上げる事が出来る。これが成功すれば俺の昇進は確実に決まる。そのためには絶対に成功させなければいけない。でも家に帰ると二人の可愛い子どもと愛する妻が出迎えてくれて、俺を癒してくれる。俺の仕事のスイッチが切り替わる瞬間だ。
「ただいま。」鍵を下駄箱の上に置き、靴を脱ごうとしていると、リビングのドアが開き、二人の息子が走って来た。
「お帰りなさい。」と両手を広げて走って来る姿は、本当に愛おしい。二人を抱きしめながら
「ただいま。待っててくれたのか。ありがとうな。」
「うん。パパ、ご飯一緒にたべよ。」颯斗に言われ
「そうだな。お腹空いただろ。食べよ、食べよ。」颯斗が俺の鞄を抱えて、リビングまで運んでくれた。俺はまだ歩くのがおぼつかない優斗を抱っこしながらリビングに入る。
「ただいま。」
「お帰りなさい。」この時、瑠美子の様子が変だと直ぐに気付いた。
「どうした?」
「ん?あぁ、後で子ども達が寝たら話せる?」
「おぉ。」何か嫌な胸騒ぎがしたが、大したことではないだろうとも思っていた。
ご飯を食べてから、俺と優斗、颯斗でお風呂に入る。男三人で入る風呂は賑やかだ。だが、流石に優斗と颯斗の洗体をしてから、自分の身体を洗っているとのぼせてくる。
ここは早いとこ出て、ビールを飲んだら旨いだろうなと。そう思った俺の頭にはビールしか浮かんでこなかった。
急いで着替え、冷蔵庫から冷えたビールを出し、一気に飲んだ。
「ぁあ~、うめぇ~。最高だ。」
「それは良かったわね。」寝室から出て来た瑠美子が苦笑していた。
「二人共寝た?」
「うん。」
「それで話って?」俺たちはソファに腰かけた。
「実は幼稚園の先生から連絡があったの。」俺はその内容に衝撃を受けた。
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