第8話
初めての子育てを俺達夫婦は、お互いの両親の助けを借り、颯斗が寝がえりしては感動し、つかまりながらも一人で立つことが出来たら褒めまくりながら動画を撮影し両親たちに送ったりして、颯斗の成長を皆が楽しみにしていた。
颯斗が二歳になって半年経った頃に、瑠美子が体調を崩した。俺は仕事が休めなかったので、お義母さんが泊まりで看病と颯斗の子守に来てくれていた。俺は仕事が終わると急いで帰宅した。
「ただいま。」リビングのドアを開けると、颯斗が俺の帰りを今か今かと待っていたかのように、両手を広げながら走って来た。
「颯斗、ただいま。」俺は颯斗を抱っこした。
「お帰りなさい。浩司さん。」
「お義母さん。瑠美子の具合はどうですか?」と颯斗をぎゅっと抱きしめながら聞いた。お義母さんは笑顔を見せ
「大丈夫よ、病気じゃないから。今、ベッドで休んでる。起きてると思うから顔見せてきたら?」と心配と言うよりは喜んでいるように見えた。娘が具合悪いのに、変なお義母さんだ、と俺は怪訝な思いで寝室に行くと明かりがついていた。
「瑠美子、大丈夫か?熱はあるのか?ご飯は食べられそうか?」と颯斗と一緒にベッドに腰かけた。
「うん、大丈夫。颯斗、ごめんね、寂しい思いさせて。」と俺の膝に座っている颯斗の頬を指で優しく撫でていた。その指を颯斗が握って、楽しそうにしていた。
「体調が良くなるまでお義母さんに居てもらおうか?お義母さんもお義父さんの事があるから長くは居られなかったら、俺のお袋に連絡しようか?」
「うん、ありがとう。実は見て欲しいものがあるの。」とベッド横のサイドテーブルの引き出しを開けて取り出した物を、俺は前にも見たことがあった。
「…まさか。」と俺がその物を見る前に瑠美子に聞くと
「その、まさかです。」と笑顔で線が二本入った検査薬を見せてくれた。
「マジで?ほんと?」と俺は天にも昇るような嬉しさで検査薬を見ながら、何度も瑠美子に確認していた。
「うん、ほんと。二人目が出来ました。」
「やったぁ。ありがとう。ありがとう。スゲー嬉しい。颯斗、お兄ちゃんになるんだぞ。」と両手で颯斗の脇を持ち、高い高いの状態で下から颯斗の顔を見上げて話しかけた。颯斗は何のことか分かっていないと思われるが、高く持ち上げてくれた事にキャッキャッと喜んでいた。
「浩司さん、おめでとう。」ドアの所に立っているお義母さんに声を掛けられた。
「ありがとうございます。」俺の興奮はまだまだ冷めてはいなかった。
「颯斗もお腹空いたと思うから、皆でお祝いのお食事にしましょ。」とお義母さんがお赤飯を焚いてくれていた。
「今日は私たちだけだけど、今度また改めてお父さんや浩司さんのご両親とみんなでお祝いしましょ。」そう言って四人でお義母さんの作ってくれた食事を囲みながら、次は女の子が良いとか、男兄弟でもいいなとか言いながら盛り上がっていた。颯斗は俺たちの会話よりも食べるのに集中していた。俺は瑠美子と颯斗、産まれてくる子どもと両親たち、皆がこれからも幸せに過ごすと、この時はそう思っていた。
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