第3話

「おい、畠岡。どう言う事だ。」突然、佐久間が俺の首に腕を回してきた。

「何だよ。苦しいじゃないか。」真面目に仕事している時に急に不意を突かれて、のけぞってしまった。すると隣のデスクの人には聞こえないように

「お前、どうやって瑠美子を落とした?」耳元で小さく囁いた。佐久間の言っている事が理解出来なかったので

「何言ってるんだよ。毎日メールでやり取りしてるだけだよ。」そう言って首に巻き付いていた佐久間の腕を振りほどいた。

「って事はお前はまだ気づいていないのか?」

「何をだよ。もうすぐ昼だから、昼飯一緒に食べようぜ。その時に話そう。」

「そうだな。仕事中に悪かった。じゃあ、後で。」俺の肩に手を置き二回軽く叩き、その場から離れて行った。佐久間が俺に何が言いたかったのか気になったが、今は午前中までに仕上げなければいけない仕事に集中していた。

昼のチャイムと同時に背もたれに身体を預け、腕を伸ばし背伸びをしながら

「やっと終わった。間に合った。」と天井を見上げた。安堵していると、急に俺の顔の上に佐久間の顔が見えて驚き、ひっくり返りそうになった。

「びっくりさせるなよ。」

「悪い、終わったか?迎えに来たぞ。飯に行こうぜ。」満面の笑みだった。

「お前のその笑顔、気持ち悪いぞ。」

「そっか?俺の顔は前から変わらないと思うけど。」俺が注意しているのに佐久間には全然、響いていない様子が見え、俺は飽きれて大きく溜息を付いた。


 俺たちは近くのファミレスに入り、1時間しかない休憩を有意義に使うべく、席に案内されると素早く注文した。店員が席から離れると同時位に

「畠岡は気付いてないのか?」と突然、佐久間に質問される。俺は佐久間が何を言っているのか解らず、

「何?誰か見てるのか?」と周りをキョロキョロと見まわした。その様子を見た佐久間が目を見開き、口をぽかんと開けて、俺を凝視していた。

「お前は天然か?」と言いながら笑い始めた。

「何だよ、俺を馬鹿にしてるのか?」

「馬鹿に何かしてないよ。畠岡の性格じゃあ、気付く訳ないなと実感しただけ。」

「どういう意味だよ。」俺は佐久間が何を言いたいのか、さっぱり解らず、俺を小馬鹿にしているのかと思って、少し怒りが出ていた。

「ごめん、ごめん。」半笑いしながらの謝罪は謝罪に聞こえないと佐久間の顔を見て思った。

「実は、瑠美子がお前の事、好きになってるみたいなんだけど、畠岡は気付いてたのかと思ってさ。」佐久間は謝罪の時の半笑い顔のまま、話し始めた。

その顔ではとても信用性が無いと思い

「いやいや、それはないだろう。そんな感じ、全然見せないし…。」

「やっぱり、お前が気付いてないだけだ。瑠美子は畠岡を好きみたいだぞ。」

「えっ…。」俺は佐久間の言葉が信じられず、思わず凝視していた。

「お前にそんなに見つめられてもキモイだけだわ。」と言いながら運ばれてきたハンバーグ定食に手を付けようとしていた。

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