寺・ライブ・制服

「あーっ疲れた!テストやっと終わった!」

「お前、今回は大丈夫なんだよな?」

「だいじょーぶ!ちゃんと全部埋めたから!」

「それ大丈夫なのか…?」

隣でぴょこぴょこと翠が跳ねる。

「新は心配しすぎだよー。教えてくれたんだし大丈夫!」

「お前前科があること忘れてるだろ…。」

そう、翠は前回のテストでしっかり教えたにもかかわらず赤点を連発したのだ。

「うーん…。あっ、じゃあそこのお寺でお祈りしよ!ガクギョージョージュ…?ってやつ!」

「学業成就はテストの前じゃなきゃ意味ないだろ…。」

「いいからいいから!」

そういって翠は強引に俺を引っ張っていく。いつも俺はこいつに振り回されている。この前の委員会の時だって…。

なんて考えているともうお寺の中に連れて行かれていた。というかここ学業に関する寺じゃないだろ…。あと作法とか知ってるのか?いや、わけないか…。

思った通り翠は作法も何もなくお賽銭をして手を打った。そして

「テストでいい点取れますよーにっ!」

と大声で言った。

はぁ…、なんて思った次の瞬間ぎゃらーんという音がお寺の本堂から聞こえてきた。何かの楽器の音のようだがなんでこんなところから?翠もそう思ったようで「聞こえた!?なんだろう今の音!」と周りで騒ぎ続ける。いつまでやってんだ…。頼むから…

「ちょっと静かにしてくれ!」

翠に向けて少し大きな声を出す。そうすると小春は「えへへ、ごめんね。」なんて言って笑っていた。すると本堂から聞こえていた音も静かになって、代わりにドタドタと言う音が聞こえる。

「すみません!まさかこんなところに人が来るとは思わず…。ご迷惑おかけしました!」

バタン!と勢いよく扉が開いて中から和服でギターを持った青年が飛び出てくる。服装はお坊さんのようだが髪がちゃんとあり、なんなら金髪だ。ここの人間のようだが寺の関係者とは思えないな。と言うかそれより、

「ごめんなさい!あなたじゃなくてこいつが騒いでたもんですから…。」

と言って頭を下げる。

「いえ、それでもご迷惑おかけしたことには変わりないので…。」

と言ってお坊さん?も頭を下げる。よかった、いい人のようだ。でも横のやつの存在を忘れていた。

「お坊さんが弾いてたんですか!」

「ええ、まあ。一応坊じゃなくただの手伝いなんですけどその代わりにここをスタジオがわりにさせてもらっていて。」

「へーすごい!もう一回聞きたいです!」

翠がそう言ってお坊さんと話しだす!

「おい、迷惑かけるなよ。」

「いえいえ、むしろお詫びと言ってはなんですがぜひ聞いていってください。中にバンドのメンバーもいますので。」

「やった!ありがとうございます!」

まじか、俺もいくのか…。

中に連れて行かれると他に三人の和服を着た人といくつかの楽器。所狭しとコードが並んでいた。

「じゃあ、ちょっと話して準備してきますね。」

そう言って金髪の人はメンバーのところに言ってしまう。なんとなくその場に翠と並んで座って待つことにする。

「楽しみだね!生で聴けるなんてラッキー!」

「なんで素人の演奏をわざわざ聞かなきゃいけないんだよ。まあ上手そうだからいいけど…。」

そんな話をしていると「あ、あ、」とマイクを通して音が聞こえた。

「すみません、お詫びに聞いていってください!普段は顔出しNGですが、今日はスペシャルライブ!クロラムネって言います!覚えてってください!」

二人で顔を見合わせる。クロラムネといえば最近話題の顔を出さないロックバンドだ。なんでこんなところに…!

「じゃあ、一曲目ーーー」


何曲かのスペシャルライブを終えると汗だくになっていた。結局すごく盛り上がってしまった。素人なんて言っていた自分をぶん殴りたい。

「ありがとうございましたー。」

そう言ってボーカルだった金髪の人が近づいてくる。確か名前は…

「ソラさんだったんですね…。いいんですか?こんなに顔を見せて…。」

横で翠は他のメンバーの方達と話している。

「んーまあダメだろうね!」

なんて今日1番の笑顔でソラさんがいう。

「えっ!」

「まあでも楽しかったでしょ?俺たちも楽しかった!だからよし!」

あ、でもこのことは内緒ね?とウインクまでされてしまう。なんだかうちの担任を思い出した。

「あと、その制服、星雪高校でしょ?そこ妹が通ってたり友人がちょっといるからなんとなくいいかなって思ったんだ。」

そう言って楽しそうにソラさんは笑う。なんだかほんとに空みたいな人だ。

「絶対、誰にも言いません。でも、もしまた見つけたらまた聴かせてくれますか?」

「君、いい性格してるって言われない?」

「ええ、よく言われます。」

カラカラ笑ったソラさんが

「次は妹と来てよ。君たちはあいつと仲良くなれそうだ」


「お前らこの前空にあったんだってな?」

「先生、なんでそれを!?」

「やっぱり友人ってあなたでしたか…。」

サイダーがパチパチなって、カラカラ笑う声が響いた。

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