フィルム・藍・義足

今SNSを中心に人気急上昇中の写真家・牧田照史。片足が義足の彼はたった一枚のフィルムカメラで彼にしか見えない世界を描き出す。そんな彼をインタビューで読み解いていく。


ーーーではインタビューを始めます。

「よろしくお願いします。」

ーーーお写真見させていただきました!とても心に残るものがたくさんで本当に感動しました。

「ありがとうございます。最近色々な人から感想をいただけてとても嬉しいです。」

ーーー牧田さんの写真は一台のフィルムカメラで全て撮られているんですよね。

「はい。昔とても大切な人に買ってもらったものなんです。一応他のも使ってみたんですけど全然手に馴染まなくてやめちゃいました(笑)。」

ーーーそうだったんですね!とても素敵だと思います。その方はどんな方なんですか?

「僕が写真を教えてもらった先輩ですね。僕は元から義足だったわけではなくて、高校の途中で事故に遭っちゃって。それまでは運動も大好きだったんですごく落ち込んでしまって。そんな時たまたま学校でその人の写真を見て、なんか感動しちゃったんです。それで写真ならこの足でもできるなって。ぼくが夜の写真が好きなのもその先輩の影響なんです。」

ーーー確かに夜の写真が多いですね。具体的にどんな影響を受けたんですか?

「夜って暗いじゃないですか。だから怖くて寂しいものだと思ってたんです。しかも電気を消したら真っ暗で。黒い箱に入れられてるみたいな。でもその先輩は夜を美しいって言ってたんですよ。空は青くなくても、赤でも紺でもいいんだよって。その先輩は夜空をよく藍色って言ってました。黒でも青でもない。藍の色だって。」

ーーーとても素敵だと思います。

「あれ?照れてますね(笑)。」

ーーー何のことです?それより、その先輩からは何か連絡がありましたか?

「はい。でも褒めてくれないんです。たまには褒めてくれてもいいと思うんですけどね。そう思いません?」

ーーーそうですね。とてもいい写真だと思いますよ。

「あ、やっと褒めてくれましたね、先輩。」

ーーーちょっと、先輩って呼んじゃダメって言ったじゃん!

「だって褒めてくれたじゃないですか。いっつも家でも褒めてくれないから。」

ーーーだからそういうこと言わないでって!まあここカットするからいいけど…。え、編集長。え?全部使うんですか!?なんで?!面白いから!?だめですよこんな!

「あ、僕は全然大丈夫ですよー。」

ーーーちょっと黙ってて!ちょっとインタビュー終わり!ねえ編集長!


そんな前代未聞のインタビュー記事は瞬く間に拡散され、牧田のSNSにはとても美しい女性が夜の街で笑う写真が投稿されたという。


「本当にそのまま記事にされるとは…。」

「まあまあ、いいじゃないですか。みんな祝ってくれてますし、結婚しませんか?」

「今そんな冗談言わないで!」

「冗談じゃないです。ほら指輪。」

「…まじ?」

「まじ」

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