サイダー・夢想家・教師

ピッ、ガタン。プシュッ。

夏になるとこの飲み物が無性に飲みたくなる。ガキくさいけど仕方ない。男はいつだって子供心を忘れちゃいけないってもんだ。またこんなん言ったらいつまで夢見てんだって言われるんだろうけど。

「あっー!いいの飲んでる!」

「ん…?あ、本当だ。こんなところで何してるんですか、先生。」

元気いっぱいなでかい声と落ち着いてるけど呆れたような声が聞こえてくる。誰かと思えばうちのクラスの学級委員二人だ。体育館裏のサボり場所がバレちゃったな。

「先生だって休息が必要なんだよ。お前ら二人こそ何でここに。先生流石に校内でのいかがわしい行為は認められないぞ。」

ため息がふたつ重なった。

「文化祭の出し物決まったから探してたんですよ。いっつも職員室にいないとかどんな教師ですか。」

「ちゃんと君たちの担任ですよーっと。んで文化祭何すんの?」

「えーっとねぇ、コスプレ喫茶!せっかくだし楽しいことしたいよねーって!」

「僕は止めたんですけどね…。」

ウキウキした声と深いため息混じりの声が混じる。二人がまた言い合ってるみたいだ。全く仲良いんだねぇ。

「漫画みたいでいいじゃんか。夢は叶えてこそだろ。」

二人が対照的な顔でこちらを向く。

「でしょ!?だよね!」

「本気ですか…?」

「本気だよ。夢なんて語ったもんがち、叶えたもんがちなんだ。高校生でいられる時間なんて一瞬だ。できる限りの青春するに越したことはないぞ。」

そう言ってサイダーを一口。甘く弾ける水が勢いよく喉を通る。

「まあ、君たちはわかってるよねー。」

へらっと笑うと方や誇らしげに、方や仕方なさそうに頷く。

「当然!」

「何度も聞きましたよ。」

そう言って二人も笑った。いい生徒を持ったもんだな。

「んじゃ、行きますかねぇ。」

重い腰を上げ歩き出す。日陰にいたとはいえいい加減クーラーが恋しい。溜まった仕事もある。もう俺は子供じゃないけど、これから夢を見る子供たちの夢を見て、夢を見せてもいいと思うんだ。

だから俺は今日もこうしてサイダーを傾ける。


「あ、そうそう。二人にもこれ買ってあげるからさ。あの場所のことは黙っててくんない?」

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