超ショートストーリー

雪野蜜柑

リング・旅行・幻影

何だかゆらゆら気持ちが揺れてる…。気持ちいいなぁ…。でもなんか揺れが強くなってる?

「…て、…きて。」

うぅん、なんかうるさい…せっかく気持ちいいんだから…。

「起きて!朝ごはん食べるんでしょ?」

え、ご飯…?そうだ、私旅行にきてて、それで朝ごはんのビュッフェが美味しそうで…、

「ご飯!?」

私が飛び起きると横で大樹が微笑みながら座っていた。

「そう、ご飯。小春楽しみにしてたでしょ?」

「そう!今何時!?」

「今6時半だよ。まだ余裕はあるけどちょっと早起きしよう?」

「えぇー眠いよぉ〜…。」

「いいから!ほら起きて!」

渋々私は起き上がって横に置いてあったメガネをかけた。

「おはよう小春。」

「おはよう大樹…なんか顔赤くない?」

「…気のせい。ほら、顔洗ってきなよ。」

そういって大樹は離れていってしまった。なんか照れてる?私昨日なんかしたかなぁ…。昨日は二人で温泉入って美味しいご飯食べたりして、それで私飲みすぎて寝ちゃったんだ。酔っててなんかしたのかなぁ…。聞いてみるしかないか。

そこまで考えた時、ふと手の違和感に気がついた。左手になんかついてる。指のあたりだなあ…。

まだ起きていない頭でぼんやり考えながら、(あ、もしかしてエンゲージリングとかいうやつかな?ふふ、大樹ったらサプライズが甘いよ!)とバカなことを考えていた。そしてノロノロと左手を見るとそこには大きな大きな…ムカデがいた。


「うぎゃあ!!!」

「うわっ!!」

私は再び飛び起きた。横で大樹がすごく驚いている。旅館とかじゃなくっていつものうちだ。

「ど、どうしたの小春。ニヤニヤしてたと思ったら急に叫んで。」

「なんかすごく怖い夢見た。大樹と温泉旅館に行っててね。起きたら左の薬指になんかついてて、エンゲージリングかと思ってニヤニヤしたらムカデだった…。」

「…ふーん。」

なんか冷たい反応だな。…ん?またなんか指についてる…!?

「やだっ!」

そう叫んで左手を見ると、そこにはキラキラと光るシルバーのリングが。シルバーのリング?

「大樹っ!これっ!これっ!!」

「さあ、何のこと?」

そう言ってそっぽを向いて顔を赤らめる彼を見ると、私はいてもたってもいられなくなり思いっきり彼に飛びついた。

「ありがとう!大好き!」

「…ムカデと間違うならそれは返してもらおうかな。」

「だめ!絶対返さない!」

照れ隠しでそんなことを言っている彼が愛おしすぎて私は彼を抱きしめる力をさらに強めるのだった。


「そういえば、大樹もつけてるね!おそろいがよかったの?」

「小春は嫌だった?」

「そんな!新婚みたいで嬉しい!」

「…それはまたおいおい、ね。」

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