ししゃも

@nickbalbossa

ししゃも


ししゃもが爆発する。

何度やっても爆発する。


国道沿いのコンビニでは、なぜかししゃもがよく売れる。

夜食なのか、晩酌のアテなのかはわからないが、一パックに4匹入ったししゃもがよく売れる。税込273円。

ししゃもは冷蔵なので、レジのレンジで温める。

すると爆発する。

4匹全部破裂する。

客は怒る。


レンジの時間を短くしてみるが、やはり爆発する。

最低でもどれか1匹は盛大に吹き飛ぶ。

さらに短くすると、客はぬるいから温めなおせと言う。

温めなおす。

5秒で爆発する。

客は怒る。


インターネットに助けを求める。

「ししゃものお腹に爪楊枝で穴を開けることによって爆発を防ぐことができます」

却下だ。

客のししゃもにブツブツと穴を開ける方が怒られるに決まってる。

下手するとバイトテロ扱いされて裁判沙汰だ。

「20秒ずつぐらいで加熱を止め、温まり具合を確認しましょう」

こちらも却下。

ただでさえ忙しいレジ業務中に、ししゃもだけにここまで時間を割いていられない。

インターネットという人類の叡智は敗北した。


そもそもししゃもなんかをコンビニで扱っているのが悪い。

店長にもうししゃもを仕入れるのをやめてほしいと言った。

「いや、でもほら。売れてるからさ。本部も割と推してるんだよね、ししゃも」

多分、嘘だ。店長が廃棄のししゃもを失敬しているのを何度か目撃している。

本部がししゃもを推すということも、まあないだろう。

「言い分わかるし、助けてあげたいけどね、ほら。家庭もあるからその時間帯はね」

ちなみに店長は、泣きぼくろが異常にでかいパートの伊藤とデキている。

こんな時だけ家族を引き合いに出すのはやめてほしい。


結局、今日もししゃもを爆発させ続けている。

多かれ少なかれ、ししゃもは必ず破裂し続けている。

今日は2匹で済んだのに、客が特別怒ったので返品対応した。

悲しい、ししゃもよ。お前はなんでこんな苦しみを生み出し続けるんだ。

廃棄かごに入れるためにししゃもを持った瞬間、熱されたししゃもが指を焼いた。

「あっつ!」

裏返しに落ちたししゃものパックに貼られたラベルにはこう書いてあった。


『カペリン(カラフトシシャモ)』


お前、ししゃもじゃなかったのか。

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