第79話 ゴーレム狩り③~業火の中で破滅と出会う~
「この世で最も重い罪とは無知というものじゃ」
火の粉の舞う中で、魔女は楽しげにくるりとまわる。
「人は生きているだけで罪。殺し、奪い、
人とは罪に
「だというのに、罪とは
この異常の中で、まるで花畑にいるかのように、
「おぬしはどうじゃ、ガリバー?」
魔女を目の前にして、ガリバーは足を止めていた。混乱していたのだ。この場が異常であるというのに、いるはずのない者が目の前に立っている。
「どうして、ここに?」
「どうして? ぬひひ。おもしろいことを言う。今この場にわしがいるということは、どういうことか予想がつくじゃろう」
「まさか、冒険者!?」
「うーむ、そうじゃとは言えぬが、まぁ、おぬしから見ればその理解で相違ないじゃろう」
「おまえが先生を!」
ぬひひ、と魔女は笑う。
「左様。わしの策略じゃ」
「っ!」
「まぁまぁ、そういきり立つな。わし一人の力ではゴーレム狩りなどできやせん。協力者がおらんとの。なぁ、ガリバー?」
「? 何のことだよ?」
「おぬしの言う先生には会ったじゃろう。光に包まれていたのを見んかったか? あれは太陽鉱石じゃ」
「え?」
「普通ならば警戒して受け取ったりしなかったじゃろう。しかし、情というのはもろい。あのゴーレムであっても付け入る
「まさか……!?」
「運んでくれたこと感謝するぞ、ガリバー。わしとおぬしの共同作業じゃ。誰もなしとげたことのないゴーレム狩りを
「嘘だ、……嘘だ!」
「ぬひひ。よいぞ。魔女の言葉は疑うべきじゃ。しかし、残念ながら嘘ではない。この状況が物語っておるじゃろう」
「嘘だ……、だって、そんな、僕が、先生を……」
ガリバーは、膝をついて顔を覆った。
その様子を見て、魔女がにんまりと笑う。
「おぬしのせいじゃ」
「違う」
「おぬしがゴーレムを殺した」
「違う!」
「おぬしの罪を認めるがいい」
「違う違う違う!!」
声は炎の中に消える。
「僕じゃない!」
ガリバーは、立ち上がって魔女に剣を向けた。
「おまえのせいじゃないか!」
身体が震える。いったい何に
恐怖を断ち切るように、ガリバーは剣を振り上げる。だが、彼の迷いに満ちた剣は
「くはっ!」
空気を吐いて、ガリバーは
「殺してやる!」
すると、魔女は、
「ぬひひひっひひひひひひっひひひひひひっひ! その顔、その目、その怒り! あぁぁ! 見たかった! その
魔女の笑いが止まらない。
「なぜ、わしがここに来たと思う? おぬしに知らせるためじゃよ。ゴーレム狩りなどついでじゃ。わしがやらずとも連れてきた冒険者がやるじゃろう。それよりも、おぬしに知らせてやりたかった。おぬしの罪を!」
いったい何がそんなにおかしいのか理解ができない。その不条理が、いっそう恐怖をまき散らす。
魔女は、
「さぁ、
魔女。
ガリバーはその怖さを知識として知らない。けれども、その身をもって、今、その恐怖を知らされていた。
「あ、あ、あぁ、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
「ぬひひひっひひひっひひひひっひひひひっひ!」
悪意を詰め込んだような笑い声が響く。まるで地獄の底のような業火の中で。
そこに希望はない。
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