第74話 魔女の座談会。どうせ悪だくみです
「ゴーレム狩りですわ」
金髪の猫耳娘は、温泉に
「考え直さんかの」
「愚問ですわ。冗談で
「そうじゃな。緊急事態だと言われて急いで尋ねたら、部屋の掃除をさせられるなんてこと、普通はないじゃろうて」
「あのときは大変だったんですもの。ピーナッツバターの
「くそっ、次やりおったら、瓶に詰めてバターにしてやる」
「あはは、ムリですわね、それ」
ぐぬぬと女は顔を
近くに火山があるおかげでここいらに自然の温泉がいくつもある。彼女達は、その内一つに浸かっていた。とはいっても魔国と人間の国の境にあり、観光客などはいない。周囲を見ても、こんなところの温泉に浸かりにくるのは、彼女達二人だけである。
たった二人の女。しかし、その中身は異なる。
魔女。
一応、人間と呼ばれる種族であるが、彼女達が人間に分類されることはない。魔女という種族。そう考えて差し
破滅卿と呼ばれた女、破滅の魔女は、水面を足でばしゃばしゃと
「というか、金ぴか姉様。湯に浸かるときくらい装飾は
「嫌ですわよ。
じゃらりと、
「姉様の身体じゃないじゃろ」
「
「道具を
「あなたは自分の体も飾らないじゃないですか。前に会ったとき、ぼろぼろの服を着ていて、どこの
「ほっとけ。見かけより効率じゃ。姉様みたいに、見かけばかりで中身のない法具を身につける気はない」
「私様は両立しているんです。魔法とは常に美しくなければいけませんからね」
「価値観の相違じゃな。魔法とは
「はぁ。昔からあなたとは意見が合いませんわ」
「意見の合う魔女などおるのか?」
「む。まぁ、いませんけど。でも、
「え? 何で? 白骨の魔女って、
「何でしょう。視界を白に統一するという美意識?」
「……まぁ、姉様がそれでいいんなら、勝手によろしくすればいいかと」
湯に浸かり直す破滅の魔女に対して、そんなことより、と黄金の魔女が話を戻す。
「ゴーレム狩りについてですわ」
「あー、それのぉ」
「それですわ」
「正直、ムリじゃと思うんじゃよな。魔法の効かないゴーレムって、わし
「まぁ、そうですわね」
「何で、今さらゴーレムなんて」
「ちょうど今組んでいる魔法具で、ゴーレムを参考にしたいんですの。ほら、ゴーレムって魔法の
「金ぴか姉様は研究熱心じゃの」
「あなたはもう少し魔道の探求をなさい。世の中の敵となることだけが魔女の
「魔女の務めではないが、わしの生き様ではある」
「うるさいですわ。とにかく、私様がゴーレム攻略をしたいと言っているのですから、協力なさい」
「今さら言うのもなんじゃが、何でわしが?」
「あなた、昔、ゴーレムつくってたでしょ。壊し方もわかりませんの?」
「わしのは
「うわっ、何ですの、その
「見かけはかわいく作ったんじゃぞ」
「そういう問題ではありませんわ。まぁ、いいです。とにかく、私様の研究にどうしてもゴーレムの死骸が必要なの。何とかしてゴーレムを壊しなさい」
「相変わらずむちゃくちゃな」
「いいでしょ。
「まぁ、楽しそうではあるがの」
「うふふ、意見は合いませんが、破滅卿のそういうところは好きですわ」
「はぁ、姉様方の中では好きな方じゃが、金ぴか姉様のそういうところは苦手じゃ」
肩を落とす破滅の魔女に対して、黄金の魔女は子供のような笑顔で
「で、何か考えてきたんでしょうね?」
「一応のぉ」
「さすがは破滅卿ですわ。で、どうやって壊すのかしら? 魔法はいっさい効かない、物理攻撃も効かない。その上、半永久的に止まらないゴーレムの弱点って何なの?」
「弱点は、ない」
「? それは何かしら? 私様への遠回りな反抗?」
「待て待て。別にさぼったわけではない。実際のところ、あれの弱点などないのじゃ。正面から壊せるとしたら、英雄か龍か魔王くらいのものじゃろうて」
「じゃ、どうするんですの?」
「50年くらい時間をくれれば、英雄をつくるという手がある」
「嫌。そんなに待てませんわ」
「じゃろうな。だからといって、龍や魔王を
「あら、そう? 今さらだと思いますけど」
「まぁ、姉様はそうじゃろうが。ということで弱点はないので壊すのは難しい」
「ふーん、で?」
「うっ、金ぴか姉様、怖いんで、すごまんでくれんかの」
破滅の魔女は、逃げるようにして湯舟の向かい側に泳いでいき、岩に両腕を乗せて、ぬひひと笑ってみせた。
「ちゃんと作戦は考えてある。それにしても、本当に姉様は運がいい」
斜面の下の方から歩いて登ってくるのは一人の少年。歳は十二、三といったところか。東の方に多い黒髪と黒目。剣を
「弱点がなければ作ればよい」
「あれが弱点ですの?」
「あれが弱点になる」
「そう。じゃ、お願いしますわ」
少年を見下ろすのは二人の魔女。この世の不条理を
「ところで、破滅卿。あなた、若いのにどうしてそんな年寄りくさいしゃべり方するんですの?」
「ほへぇ?」
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