第7話 火種
芹奈の一件の後からアリアの機嫌が非常に良かった。
事後がどうなったか気になってはいたが、聞けばせっかくのご機嫌を損ねそうだったので聞くのを止めた。
立場が上でも男は惚れた女の機微に左右されるものである。
それから数日はアリア達と穏やかな日常を満喫していた。
しかし、その平穏を破る知らせが今もたらされていた。
「メヴィ様、カデンサの街から火急の報せが……どうやらスタンピードの兆候との事です」
アリアから受けた報告に僕は眉をひそめる。
「あそこは重点的に魔獣を間引いていたはずだが」
カデンサの街の付近には黒竜の巣があり、瘴気に魔獣が引き寄せられたり、当てられた獣が魔獣化する傾向が強いため重点的に魔獣討伐を行っていた地区のはずだった。
「はい、前回は
「エルリックの部隊か、それならば間違いはないはずだが」
エルリックは学園時代知り合った親友で卒業後僕の求めに応じて士官してくれた。
アリアと同じ魔力が乏しく魔法の才には恵まれなかったが知略に長け、時代が乱世なら不世出の軍師になっていたのではないだろうか。
「はい、今回の件は外的要因ではないかと、状況的にはサクソン州で起きたスタンピードの時と酷似しております」
アリアの進言で芹奈が連れていた二人を思い出す。
確か手配書にはあの二人とは別に男女ペアの冒険者がいたがそいつらの仕業なのだろうか?
「例の手配書にある残り二人についてだが、目撃報告などはあるか?」
「いえ、ただ最近回ってきたものなので民にはまだ行き渡っておりません」
「分かった。その線も含めて調査しないとな、直ぐに向かう」
僕は現地に直接赴くことにし、アリアに準備を整えるように伝える。
「部隊はどう致しますか?」
「
「それでしたら、マリカマリウスが宜しいかと」
「なんだ、マリが戻ってるのか?」
僕がマリと呼んだ、マリカマリウス・ゼオもエルリックと同様に学園時代からの知り合いと言うか彼女も側室のひとりだ。
「はい、任務が終わりこちらに帰還途中とのことでしたが、場所的には一番近いため、そのままカデンサに向かわせますので現地で合流して下さい」
「分かった。僕は転移で先に行って調査と間引きを行う、第2師団の到着を急がせてくれ」
「畏まりました。エルリック様なら問題ないかと思いますがお伝えしておきます」
「頼む、それでは留守は任せた」
「はい、お任せを…………ただ、余りマリカにばかり現を抜かしては嫌ですよ」
そう言ってアリアが僕にキスをすると微笑んだ。
「えっと……善処する」
僕は少しだけ気まずい思いをしつつカデンサに転移した。
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