第7話
私と友梨は一連の流れを拙いながらも説明をした。迷ったりしていると、谷川さんなりに質問してきてくれたり、相槌を入れながら話を聞いていた。
谷川さんの表情はずっと複雑だった。
どうしてこんなことをしているのか。
なぜ相談をしてくれないのか。
自分は頼りないのか。
心の叫びがこちらまで聞こえてくる。私まで心が痛くなった。友梨は谷川さんを慰めようかとずっと迷っていたようだったが、
「でもまだ潮中さんと決まった訳じゃないですよ」
柔らかな声で伝えていたが、谷川さんは諦めたように軽く首を振り
「慰めてくれてるんですよね。でも、心当たりがいくつかあるので…」
「「谷川さん」」
「そんなに悲しい顔をしないで下さい。僕は優風を止める為に行動しなければいけないので落ち込んでいる暇は無いです」
次に向けて前を向いている谷川さんは立派だと思う。でも、谷川さんの立ち直りが早すぎると感じている私もいた。恋人がこんなことをしていて、私ならすぐに切り替えが出来ないと思うし、行動に移せない。もし友梨が…
「彩香、ボーッとしてたけど大丈夫?」
「疲れていますか?」
「ううん、大丈夫。ちょっと考え事してた」
目の前で手を振っている友梨。私が気づくように目線を合わせていた。谷川さんと友梨が私が考え事をしている間に話し合いをしていたみたいだ。
「ならいいけど、話はちゃんと聞こうね〜」
「分かってま〜す」
「適当に返事してるでしょ」
「してませ〜ん」
「ほら、今の返事も」
「今ってどの返事?」
いつもの事だと分かると流れるようにじゃれ合いを始めてしまった。会話のテンポに置いていかれている谷川さんは低い声で
「仲良くするのはいいですが、まずは話し合いをしませんか?僕は午後から出掛ける予定があるので」
「「すみません!」」
「こちらも水を差すようなことをしてごめんなさい。あまりにも仲が良いのでイタズラしたくなったので」
怒った後に見せた顔は素の表情に見えた。笑い方も自然だった。その方が親しみやすいからみんなに見せていけばいいのにな。私はその顔を見ながら友梨を見ると同じこと考えていると思う。目線が合って頷いたからね。
それに谷川さんの時間には限りがあるので、私は黒板に向かってチョークを持ち
「さぁ作戦会議をしましょう」
教卓に肘を置きカッコつけて言ってみたら
「似合わないね」
友梨に辛辣な感想を言われた。それも結構冷たい声だった。谷川さんは
「そうですね。優風を止める為にお願いします」
私と友梨に深々と頭を下げた。その決意を無駄にしない為に私たちは作戦会議を始めたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます