第6話
学校に着くと、部活生が走ったり、日陰で休んでいたり、教室で委員会の作業をしたりと休みにも関わらず賑わっていた。
早足で教室に向かうと、すでに友梨と誰かが話しているのが見えた。急いで扉を開けると
「やっと、彩香が来た」
「ビックリした」
友梨はなんともなかったが、肩を大きく揺らした人が待ち合わせの人だった。そんなにビックリしなくてもいいのになと思っていると
「はじめまして。僕は隣りのクラスの谷川です」
近づいてきて、右手を差し出してきた。私は握り返して
「こちらこそはじめまして。彩香って言います」
「大丈夫、君のことは知っていますよ。友梨さんから色々と話を聞きましたので」
「ちょっと待って!友梨、何言ってたの?」
友梨が少し悪い顔をしていたので、何か私のやらかしたことでも話していたと思う。谷川さんの顔も愛想笑いをしていた。
「普通のこと話しただけだよ。ね〜、谷川さん」
「そうですね。普通の日常であったことを話していましたよ」
「もう分かったから。それよりも、潮中さんの話を聞かないと」
「そうだったね。昨日連絡したことなんだけど、話聞かせてもらっていいかな?」
「その為に僕が呼ばれたからね。何から聞きたいですか?」
私と友梨は互いの顔を見て、何から聞くべきなの迷っていると、
「なぜ、潮中さんの話を聞きたいのですか?」
「「……」」
私たちが答えにくい質問をしてきた。そうだよね。普通は理由とか聞きたくなるよね。どう答えようか迷っていた。真実を伝えても、信じてもらえないだろうし、まだ確証が無いのだ。潮中さんがどんな人で、なぜ願いを叶えたいのか。何も分からないから知りたい。でも、どうすれば
「ごめんなさい。何か事情があるのですね。話せる時に話して下さい」
「こっちこそごめんなさい。まだ話せないけど、話せる時になったら話すから」
「大丈夫です。僕も潮中さんのことが心配なので」
谷川さんが気遣ってくれた。友梨は素直に話せないことを謝っている。そして、気になることを言っていた。
「なんで潮中さんのことが心配なの?」
「そうですね。同級生であり、同じ委員会でした」
「えっ、そうなの?」
「はい。2年間一緒になり、そこそこ仲がいい方になると思います。それに…」
目線が下を向いた。何かを伝えようとして、口をパクパクしていた。そして、意を決したのか
「潮中さん。いや、優風は恋人です」
「「…えええ!!!」」
頭が鈍器で殴られた衝撃だった。情報の処理が追いつかずに反応出来なかった。
「すみません。伝えた方がいいのか迷ってしまって」
「うん、大丈夫」
「さっきの質問は、優風が何かやらかしてしまったのかと思って。それに、高校に入ってから…」
「潮中さんがどうかしたんですか?」
「……」
「谷川さん?」
「やっぱり、事情を教えて下さい。優風がおかしくなってから、僕は何も出来ていない。それに、君たちが僕に話を聞くのは、優風が何かしているのだろう。僕が優風のことを話すかわりに、なぜ優風のことを聞きたいのか先に聞かせて下さい」
綺麗なお辞儀をする。私と友梨は目線が合い
「確かな情報じゃないですけどいいですか?」
「ぜひ教えて下さい」
私たちは谷川さんに昨日までにあったことを全て話すことにした。私たちよりも谷川さんの方が止められるような気がしたから。
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