第4話

「僕は2人組の神様として生まれた。僕は縁の神として、もう1人は記憶の神だった」

「もう1人はどうしたの?」


私を見つめながら、少し悲しそうな顔で


「ここから出ていった。僕が願いを確実にするために、記憶の神に内緒で神としての力を少しずつを代償にしてたから」

「……」

「人間はだんだん僕にたくさん願い事を叶えてもらおうと、たくさんここを訪れるようになった。でも、力には限りがあるから願いが叶えられなくなった」

「そのことを記憶の神様にばれてどうなったの?」

「叱られたし、すごく心配されたから、僕の代わりに願いを叶えてきてやるって言ってくれたんだ。でも、そのせいで記憶の神がおかしくなったんだ…」

「どうなったの?」

「『人間の為に俺は力を使うことは辞めた。でも、お前の頼みごとを断るわけにはいかないから、人間に対価を持って来ないと俺は願いを叶えない。』って言った。その時にはもうどうしようも出来なかった。あいつは人間の負の感情に飲み込まれてしまっていた」

「……」

「あいつは優しすぎた。俺は全ての願いを叶えていた訳じゃない。人との縁を大事にしているものだけの願いしか叶えていない。でも、あいつは勘違いで願い全てを叶えようとした。でも、人間の嫉妬や欲望、悪意を知ってしまった。それで堕ちた」


顔を背けてしまった。話すこともつらいのだろう。人間の悪意で神様も堕ちてしまうことは、なんだか人間と同じみたいで、大変だっただろうなと思う。どの種族に生まれても、こういうことは同じことを実感した。軽い深呼吸がして、


「堕ちた後に、居なくなった。自分の力をある程度取り戻したら、探しに行った。そしたら、あいつは……。人間の願いを叶える条件として、記憶を多く持ってくることだった。願いを叶えたい人間に記憶を奪う力を与える。奪った記憶は、宝石になるから、それを持って来た分の願いを叶えられるという仕組みにしていた。止めようとしたんだが、僕には力が足りなくて、雲隠れしている。あいつは、記憶を貰っているせいで力は元の倍以上になっている」

「もしかして、青春の記憶が無くなる事件が起きている理由は」

「そういうことだよ。僕は、あいつを止めたい。その為に、君たちが探している青春泥棒を見つけ、居場所を突き止めたい。そこで君に問う」


真剣な面持ちで私の顔を見つめて


「君は僕はあいつの場所を突き止めたいが、まだここから動けない。先ほど、君の記憶を読ませてもらったが、被害が全国に広まっているみたいだし、探してほしい」

「いいですよ。私も探そうと考えていたので」

「ありがとう。僕はあいつを止める為に力を温存しなきゃいけないから、確証が持てて、あいつの居場所まで突き止めて欲しい。僕の名前を心の中で唱えてね。そしたら、僕はすぐに向かうから」

「裏切られる心配はしないんですか?」

「そこまで僕はバカじゃないよ。何年、いや何百年見てきたと思っているの?」

「それもそうですね」

「本当に、僕に協力してくれてありがとう」

「見つけるのは任せて下さい。後、早く元の場所に帰して下さい」

「あっ、ごめんね。今から帰すから待ってて。後、この宝石を彼女に返しておくね。」


宝石を私から取り、額から宝石を入れた。この姿を見て改めて神様なんだなって思った。それに、こんな体験をするなんて全然想像出来ていなかったな。犯人見つけられずに終わるオチだと思っていた。

そして、潮中さんの願いが気になっていた。多くの人の記憶を奪うくらいの願いってなんだろうか。


「あれ?彩香、どこにいるの?」

「友梨、今目覚めたの?タイミングが悪い」

「急にそんなことを言われても困る。で、ここはどこなの?」

「帰る準備できたよ〜」

「うわぁあ、びっくりした。あなたは誰?迷子になっちゃったのかな」


突然現れた神様を見て、迷子だと勘違いしている。頭をなでながら、目線を合わせるようにしゃがみこんで話しかけていた。

友梨には、先程と同じように説明をした。しかし、すぐには信じられない性格の為に、私よりも長い説明になっていた。


「分かった?もうこれで元の場所に帰すから」

「ごめんなさい。神様とは知らずに子ども扱いをしてしまって」

「気にしてないから、じゃあまたね」

「ちゃんと見つけるから」


周りが光に包まれて、視界がまた真っ白になる。

目を開けると、元の場所に戻っていた。時間は、潮中さんと別れたくらいだった。


「戻ってこれたね」

「そうだね、友梨。で、明日からどうする?」

「やっぱり、潮中さんを調べるべきだよね」

「でも、潮中さんはコミニケーション取るのが嫌そうだよね」

「まずは、潮中さんの中学の同級生に話でも聞きにいこうか」

「そうしよっか」


明日から聞き込みに行くことになった。

今日は色々なことがあって、なんだか身体が疲れていた。でも、未知の体験にワクワクしている私もいた。明日も頑張ろう。

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