第3話
目を開けると、緑に囲まれた自然のなかにいた。
人工物が無く、人間が入ってはいけない神秘的な場所のように感じてしまう。
隣には友梨が寝そべっていて、
「友梨、起きて」
揺さぶってみたが、起きる気配がない。
どうしようかと迷って、辺りを見渡すとさっき拾った宝石を見つけた。
「よし、もう1回持てばさっきいた場所に戻れるかもしれない」
宝石に手を近づけると、
「い、た……い…」
急激な頭痛に襲われた。頭が鈍器で殴られたような痛みだった。呼吸の仕方が分からない。痛すぎて、息が吸えなかった。苦しい、痛い、もう死ぬかもしれない。
頭を手で抑え、呼吸を整えようとしているが、私を追い詰めるかのように頭の中に暴力的な情報量が詰め込まれてきた。
それは友梨の記憶だった。
詳しく説明すると、友梨と私が過ごした青春時代の記憶と感情が、私の元々あった記憶を忘れさせるような勢いで押し込まれてきた。
友梨と初めて遊びに行った日のことや、喧嘩をした日のことなど、たくさんの思い出が動画の早送りのように流れてくる。
私が友梨の誕生日を忘れていて、急いで作ったしおりを友梨は忘れずに記憶していることが嬉しかった。
「思い出を楽しむのはいいけど、早くこっち向いてくれないかな」
ゆったりとした声がした。声の聞こえてきた後ろを振り返ると
「やっとこっちを向いた。はじめまして、人間」
たくさんの年月を経たであろう木の前で、人間に似た子どもが、地面に足をつけずに浮いていた。
ありえない光景に
「……えっ」
「困惑すると人間はやっぱり声が出ないのか〜」
「あの…、あなたは誰ですか?」
「え〜、教えて欲しい?」
意地悪そうな顔をして、質問を質問で返してくる。
情報を処理出来ていないが、目の前の疑問を解消するために顔を縦に振る。
「仕方ないな〜、僕はね、えーと……」
「ためるのが長い!早く教えて」
「人間はせっかちだなぁ」
「せっかちでもなんでもいいから」
「僕は神様だよ」
「神様……、神様!?」
ちょっとは想像してたけど、頭の片隅に可能性として考えていたけど、神様なの?だって、見た目が小学生だよ?そもそもなんでいるの?困惑が収まらない私に
「なんでここにいるか知りたい?」
「知りたい」
「君たちが条件に当てはまったから」
「何の条件?」
「…それは」
「条件とここにいる関係性は?目的があるから?」
「人間は危機感があると頭がよく回るね」
「そんなことはいいから早く教えて!」
回りくどい神様にイライラしていて、言い方がきつくなってしまった。夏休み初日から、変な所に連れてこられるし、友梨はまだ目覚めないし、色々と疲れている。
神様は私の頭を撫でながら
「君たちではないんだな…」
「どういうこと?」
「色々なことばかりですまない。元の場所にはちゃんと帰すからもう少しだけ僕の話を聞いてほしい」
「わかったから、早くしてほしい」
「僕も青春泥棒を探しているから、君たちに手伝ってほしい」
「それくらいいいよ。…なんで?」
「やっぱり君は反応が面白い。今から理由を話すね」
ゆっくりと話を始めた。
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