第2話

夏休み初日


朝から小雨が降っている夏らしくない日だった。

今日から、友梨と一緒に犯人を探す予定なのに、なんだか気持ちが青くなる。

窓からは、サァーサァーと言う音が、出かけたくない気持ちを増やしていく。頬杖をつきながら


「ハァ、行きたくないなぁ」


ピンポーン


家に響いた音を聞き、ダッシュで玄関の扉を開けにいくと


「おはよう、彩香。雨だから出たくないという言い訳は聞かないからね」


傘をさして、いつもの制服とは違う姿の友梨だった。やっぱり友梨の服のセンスはいいなと見とれていると


「何、寝ぼけているの?早く準備して」

「はい、今すぐ荷物とってきます」


なんか機嫌が悪い。私が寝坊して迎えに来てと連絡したから仕方ないけど、そこまで怒る必要はないでしょと思いながら、荷物を持ち、家を出る。


「遅くなりました。寝坊してすみません」

「これで何回目かな?」

「覚えていません」

「次にこんなことがあったら、アイスを奢ってもらうからね」

「はい、本当にごめんね」


毎回しているような会話をしているような気がするけど、気のせいだ。友梨に謝罪をして、一緒にいつも行くカフェで、犯人探しの為の作戦会議をすることにした。

カフェ近くの道で、若い男性と話をしている制服の女の子を見かけた。隣を歩く友梨の方に顔を向け、


「友梨、あそこにいるの潮中さんじゃない?」

「本当だ。潮中さんだね」

「何で年上の人と話しているのかな?」


潮中さんの話している相手は、チャラそうな見た目で、危ない感じがする男性だった。その人と楽しそうに話しているが、目が死んでいて、怪しい雰囲気を漂わせている。それが気になってしまい、


「友梨」

「どうしたの?」

「もしかしたら、無理やり付き合わされてるかもしれないから、助けに行くべきかな」

「どっちか分からないから、話しかける感じでいこう。勘違いかもしれないからね」


友梨は私に的確なアドバイスをくれる。私はよく周りを見れなくて、突っ走ることが多いから助かる。

段々距離を縮めていくと、会話が聞こえてくる。


「そうなんだよ。俺とアイツは仲が良かったけど、よく喧嘩したんだよな」

「喧嘩する原因はなんだったんですか?」

「そうだなぁ…」


男性が質問に答えている感じだったが、話しかけることにした。潮中さんの肩を叩き、


「やっほー!隣のクラスの潮中さんだよね」


振り向いた顔はとてもビックリしていて、その後に怒っているような顔をしていた。


「あっ、じゃあ俺はもう帰るね」

「待って、まだ話を聞き終わってな…」


男性は早足で立ち去り、潮中さんの声は聞こえていないようだった。友梨が、


「潮中さんは何してたの?」

「別に。あなたたちに話す必要はない」


顔を背け、ぶっきらぼうに話す潮中さんは、さっきよりも機嫌が悪い。小さな声で


「もう少しだったのに…」

「何がもう少しなの?」

「だから関係ないって言ってるでしょ」


怒気を含んだ声で、私たちを睨みつける。すると、急に笑みを浮かべて、友梨の額を触りながら


「キラキラしたものを持ってるね」

「何のこと?」

「気にしてないで。いつか分かるから…」


そう言って潮中さんは私たちから、駆け足で離れていった。真面目な顔しか見たことがないので、より一層笑顔が恐ろしく感じた。何してたのかなと考えていると、


「彩香、これを潮中さんが落とした」

「これは宝石?」


友梨の手のひらにあったのは、キラキラと輝く宝石だった。様々な色が混ざっているが、青がメインになっていて、とても綺麗だ。

私が宝石をもっと観察しようと思い、手を近づけると宝石が光を放ち、私たちを包み込む。


「「え?」」


困惑していると、私たちの視界は急に真っ黒な闇に変化していった…



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る