臍を固める
シラタマイチカ
臍を固める
俺の心はあの日壊れた。
どんな事をしても何を利用しても
復讐すると決めた。
他はね、知らないや。
⭐︎⭐︎⭐︎
最初はただ暴れたかった。
別に願いなんて物に興味は無いし
ただ暴れて目立って誰よりも優秀になり弟を虫ケラ扱いしたかった。
少しだけ説明すると
俺の一族は《口裂け女》だ。故に女が権力を持つ
元々は女の妖怪だが稀に俺と弟みたいな
男も産まれる。
俺たち妖怪には同じ種族でもそれぞれ個人個人違う力がある
人々が噂話などで作り出してきた口裂け女や似た噂の設定がランダムで産まれる時に加護として付与されるガチャみたいで嫌だよな
⭐︎⭐︎⭐︎
俺は強い腕力
噂を多少操ることができるだけの凡人で
親族からは少ないしょうもない加護に呆れたと聞かされた。
⭐︎⭐︎⭐︎
加護にも興味がなかった昔の俺は
一人っ子として伸び伸び生きてきたが
ある日俺の運命は変わってしまった。
そう、
弟が産まれた。
加護マシマシな弟が
速さも力も念力も俺たちの一族からしたら拍手喝采のパーティのオードブルの様な弟
挙句基礎ステータスの様な物も弟の方が異常に高かった。
お偉いさん達が弟の話ばかりをしていて
流石に面白くなかった
この時から俺は弟が大嫌いだった
その日から自分が目立つ為に、ただそれだけのために
勉強勉強勉強の毎日を送った
自分の凡人なる部分をカバーする為に呪術も何もかも片っ端から学んだ
他の奴らより優位に立ちたいが為に様々な勉強や修行に勤しんだ
更に何かないかと調べていく中で
国庫に辿り着いた
そこには国が管理する金から始まり権利書、禁じられた本、武器等なんでもある場所だと記載してあった
セキュリティ面で簡単には忍び込めないが、少し過ぎた日チャンスが巡って来た
名のあった曾祖母さんが死んだ日盛大な葬式が開かれることになり国庫から出すものがあると小耳に挟んだ。
どさくさに紛れ込み禁止エリアに忍び込み
写真でした見たことがなかった
終末の鎌と
禁忌の本を盗み出した。
《悪食》
倒した相手を食えばそいつの力が得られる
加護移る
《終末の鎌》
悪食の毒を打ち消せる神の武器
昔の言葉でそう書かれていた。
古語を勉強していたからこそ理解ができた。
バレない様に
欲しい加護を持っていた妖怪を調べ上げ
殺害し残さず食らった。
すると貧弱だった自分に力がみなぎってきた
その上加護まで奪えた。
悪食は
理性を失った同胞やなり損ないの亜種は倒さなければならないがそれ以外の意思疎通のできる
同胞に対しての意味のない殺害を禁止する為に何世代も前に禁止されていて、今や存在すら知られていないのではないかと思う。
人が見ていない隙に俺は同胞食いを続けた
そして昔俺を馬鹿にした親族もお偉いさん方も
擦り寄ってくる様になった。
あちらの世界に行くまでは誰よりも成績がいい
くらいでわざと成績を留めておいた。
優秀な俺のご機嫌伺いをする為に親族達は忙しく
本来大切にされるはずだった弟はそれなりの扱いしかされておらず、
いくら加護が沢山あろうが、
能力が高かろうが俺より下だった。
笑いが止まらなかった、
寂しい思いをしたのか弟は表情は乏しく
何を考えているかすらわからない、読み取れない子供へと育った。
自分の力もちゃんと理解できてないだろう
この様子を見るだけで愉快でたまらなかった。
そして俺があちらの世界へ旅立つ数日前に
弟は本格的におかしくなった。
あちらの世界になんて行きたくないと寸前まで遠足を嫌がっていた癖に
帰ってくると俺に
「どうやったらあちらの世界に行けますか?」と
訪ねてきた。
簡単だよ、勉強して強くなればいいと
教えてやった。
「ねえ朔夜くん。なんであちらに行きたいの?」
俺は理由を知りたくて質問した
「秋夜兄さん、内緒だよ。大きな犬に追われて怪我したのを女の子が手当てしてくれた。あちらの人は怖いと聞いたけど裂けた口を見ても悲鳴なんてあげなくて名前も教えてくれたんだ。異界の人より優しかったんだ僕は緊張して、朔までしか言えなかった…だから名前を朔だけに変えたい」
いつも生気が無いツラしてる癖に
この話をするときだけギラギラとしたら嫌なツラをしていた。
手当して結んでくれたと見せてくれたハンカチを
握りしめてまた会うんだ結婚したい。と話している姿を見て笑い出しそうだった
この時まで本気で馬鹿にしていた。
俺はあちらの世界……人間の世界に着くと住居として用意されたアパートに行き
戦闘訓練で選ばされる武器のうち一つの日本刀を床に投げた。
色々な物を記録する液晶端末には
盗み出した終末の鎌をただの大鎌として登録した。
「絶対目立つな…最高」
俺の予想は当たり大鎌の悪魔として
直ぐに名前は知れ渡った。
来る日もくる日も斬り殺し食い続けた。前期で
すでに歴代で一番の点数を叩き出していた俺は少しだけ息抜きをし始めた。
女遊びだった
飲み屋街で見つけた女とホテルに行きいきなり本当の姿を見せ消え噂を広めたり
殺した女を食べたり、ノリが良く気に入った女とは人間のふりを続けて適当に楽しんだ。
最高な気分だった。
そんな中柄の悪いホストに絡まれている女を見つけた
いつもならそんな鈍臭い女は無視したが
その女は遊び人の様には見えず
本当に絡まれている一般人の様だった。
周りの外野も見るだけで助けないのがなぜかその時だけは無性に腹が立ち
ホスト共を蹴り倒した。そして絡まれてる女を連れて人混みから逃げた。
しばらく走り抜け深夜も営業している喫茶店ルノアールに行き少し会話をした。
鈍臭い女は仕事を探し都会に来た田舎者だった
ありがとうございますと握手を求められ
気まぐれで握手をした。
もう会う事は無いだろうけど悪い気はしなかった。
それからも趣味の同胞狩も悪食も繰り返した
鈍臭い女を助けて2ヶ月程過ぎた頃
俺は女に新宿で再会する事になった、
鈍臭い癖に多少は垢抜けてそこそこ名前のある店で勤務していた。
夜の店に勤めても鈍臭さも、優しさも何も変わらなかった。何故か流れで連絡先を交換して度々会う様になった
昼間に出かけたりする様にもなった。
過ごす時間が増えると相手のことをどんどん知る様になる
自分でも信じられなかった他人に興味が湧くなんて
両親が宗教に没頭し自殺。
それからは施設で育ち働ける年齢になったから都会に来たが、お金がないと夢だった幼稚園でもはたらかけないのでお金を貯めたいから向かない仕事を始めたが寮が高すぎてとか
そんな話を沢山聞いた。
いつのまにか俺はこの鈍臭い女、理佳と体を重ねる様にまでなっていた。
毎回律儀に避妊までして。頭がどうかしてしまった
自分でもよくわからなかった、ただお花畑頭のこの女がたまらなく好きになってしまった――
よく膝枕をして頭を撫でてくれた。
「しゅうくん、しゅうくん」
と呼び笑いかけてくれた。
ろくでもない生き方をしてきた癖に
俺は理佳に愛されたいと願うようになった。
この時期から理佳には仕事を辞めてもらい寮を出て俺の狭いアパートで2人で暮らす様になった
金目当てに狩りをする事も増えた
「弟居るの?いいなあ!私家族居ないから羨ましい」
理佳は家族に憧れていた。
理佳といる時だけは穏やかでいられた、俺が何をしているかも知らずおかえりなさいと
迎えてくれた。
寝るだけの狭いアパートは色のある可愛らしい部屋へと変わって行った。
悪くないと思えた、
様々なイベントも2人で過ごした。
「私は母親の料理知らないし、コレは施設の先生に習ったの」といつも手料理を作ってくれた。
隠し事をすることに罪悪感を感じた
ある日俺は大切な話があると伝えた。
そもそもが自分は人では無いとか実は妖怪でとか
そんな話をして馬鹿みたいだよなと
言ったのち手を握り最後に薬が切れるのを待って
裂けた口を見せた。
誰かに何かを打ち明けるのはこうも怖いのかと
柄にもなくビビった
理佳はおどろかなかった。優しく触れて
抱きしめてくれた
「私に酷いことをして酷いことを言って来た人はみんな
普通の人だった、貴方は確かに人では無いかもしれないけど私を大切にしてくれたでしょ?」
その日からは俺は擬態薬を飲むのは辞めて
そのままの自分で過ごした。
子供が欲しくて理佳と致す時もう避妊をしなかった。
家庭が欲しかった
大切な人と家族を作りたかった。
理佳と過ごしてから実家への恨みも、暴れたい的な欲求も和らいでいた
異界と縁は切れないかもしれないが人間になりたいと思った。半年後まで誰かに抜かされない様に
ポイントは増やし続けた。この時は悪食はもう辞めていた
俺のシンプルすぎた動画に理佳は可愛らしい動物のイラストをつけてくれて、それがきっかけで動画は人気になりHP、書籍の収益で
ある程度の金が貯まった。
用意されたアパートではなく
広いマンションに引っ越した。確かに当たり前の仕事ではないのかもしれないが自分で得た金で
養い、引っ越し。満足感が凄かった
本当に幸せの絶頂だった。
この頃、理佳の妊娠が発覚した。理佳だけではなく俺も頭がお花畑で何故か報告すれば問題ないと思っていた。
2人で理佳が好きなアイスケーキを買って祝った。
無事産まれますようにと
理佳は病院や買い物の帰りに安産で有名な神社に通っていた。
俺もよく付き添った。
理佳は優しかった。
「シュウくんの弟を預かるのも楽しみよ、弟ができるなんてうれしい!うちの子と仲良くしてくれるかな…。いつか弟が彼女連れて来たりしたら私緊張しておかしなこと言っちゃったらどうしよう!」
「私すごくうれしい!」
「しゅうくん、弟さんも大切にしてね私仲良くしないと怒っちゃうよ!」
毎日そんな話をして過ごした。
そんな時期にポイントの最終日が来て表彰の為に異界に帰らなければいけなくなった。
「願いが一つ叶うらしいからさ。
俺人間になりたいって頼むつもり父親になるし、同じように普通の人になりたい。こっちでの仕事もいい感じだしさ…もし、あっちの仕事もやれって言われても俺ならなんとかやれるよ」
理佳に現金を残し実家に帰ったがコレが理佳との一生の別れになった――
俺は人間になりたいと何度も頭を下げたが却下され
た。
趣味も兼ねてはいたが、努力した意味なんかなかった。
それどころか
許可降りるかもと半ば強引に足止めをされその間に理佳は死んだ
病院に行く途中に大きなワゴン車が猛スピードで突っ込んできて神社の駐車場の壁に挟まれ即死
それを知って俺は頭がおかしくなり
一緒になれなくても良いから生き返らせてくれと
地べたで土下座もしたが却下された。
一番虚しく苦しく耐えがたい時間
昔読んだ禁忌の本に書かれていた蘇生術を試そうと決意して、
心労で眩暈がすると騙し抜け出して
時間の番人をしている
爺さんの元に行き頭を下げたが老害すぎて
あちらの世界の人を馬鹿にしたので大鎌で惨殺して時計を奪った。
紫鏡の婆さんに鏡をくれと頼んだが又もや鼻で笑われ却下されたのを理由に、
ならば本体を奪ってやると残殺した。
慌ててつかっても、何をしても事故は目撃が多過ぎて生き返る事はなかった。そこに居た人視界に入った人全員の記憶を変えなくてはならなくて
救急車の音を聞いただけでもアウトなレベルだなんてどうしようもなかった。
紫の鏡で理佳を轢き殺した人を見たが取り憑かれている様だった。
轢き殺した犯人とその家族を子供以外惨殺した
「お前の父ちゃんは人殺して逃げたんだよ坊主。だから罰が降った…お前も悪い事はするなよ」
子供は頭から両親の血や臓物を浴びてただ震え座っているだけの状態だった
その現場で罪人扱いされ俺は捕獲されたが
トップスコアや
貢献度を理由に許された。
本当にしょうもない下らない。
おれはあの裁判の間もずっと、
誰があのドライバーに取り憑いたか
何故あのタイミングだったか考えていた
俺は足止めを喰らい、その間に…。
やったのは自分の親族か、俺を蹴落としたい奴では無いのかと疑った。
ふざけた上の老人は頼んでもないのに勝手に
一族の繁栄を聞き届けたと盛り上がっていた。
潰れちまえとしか思えなかった。
「秋夜お前がキチンと役に立つなら生きる死体として体を修復してお前のそばにあの女を置いてやろう寂しいだろう?お前と維持装置として繋げるから腐らないし湯たんぽくらいにはなるだろう」
と下品な老人たちはにやにやとした
「彼女の腹には子供が居ました、子供は助けてはもらえませんか…お願いします」
これは多分俺のかすかに残った良心だった。
しかしその言葉を発した瞬間
親からいい加減にしろだとか処刑じゃないことを感謝なさいと怒鳴られた
勘でしかないけど、あいつがりっちゃんを殺したのでは?と疑いは深まった
そして将来ここにいるやつ全員皆殺しにすると決意した
向こう側も俺を怖がってるのか
自由に異界には来れない
家族にも勝手に会えない
あちらの世界では行動制限がある
こちらの振った仕事は必ずやれ。
まるで飼い犬
おれは口内を噛み必死に耐えて上部だけで
笑い感謝をした振りをした
「彼女を連れ、毎日感謝をして余生は必ずお役に立つために全力をつくしましょう、ありがとうございます」
深々と礼をした後親がギャーギャー喚き散らしに寄ってきた。
その場で八つ裂きにしたいのを必死に耐え
「自分が悪いのはわかってるけど、朔夜に学業面でアドバイスだけさせてもらえないでしょうかやはり弟だからこそ心配で」と頼み込んだ
周りもそれくらいならと…
朔夜と2人きりにしてもらえた。
朔夜はアホなのか好きな女の名前まで教えてくれたし、相変わらず好きな女の話の時だけはギラギラして楽しそうだった。
「兄さんの大切な人もあちらの人なんだ、同じだね」
と伝えた。朔夜は驚いた顔をした。
「俺、兄さんみたいにがんばる」
お前が目標を叶えてあっちに来てくれるのを待ってるからなと心にもない事を口にして握手をした
お前が来たら地獄に招待してやるそれしか本当は頭になかった
俺は理佳と子供と住むはずだった家に戻った。
それからは寂しさを埋める様に、真面目に働いている様に見せる為動画での収益と執筆をメインに
あちらからくる依頼やらこちらに住む異界の人の何でも屋をやりながら地味に暮らした。
そして時期は来て俺は調べていた朔夜くんの好きな女の子の養父に化けて養母が帰ってくるタイミングを狙って朔夜くんが大好きな女の子を派手に強姦した。
女の嫉妬対象は大体女だから母親が養子である女の子を責めるのはわかっていた。
弟朔夜くんの好きな女の子をぼろぼろにするのは楽しかった。
それだけで興奮した、思いつく限りの酷い行いがいくらでも出来た。
家のメンツがあるから施設ではなく母方の所有するアパートに隔離することも分かっていたから養父になりすまし尋ねて行き挙句しばらく楽しんでズタボロにした。
養父母の家に忍び込み、隔離した家で撮影した写真を日常に紛れ込ませ発見して夫婦も仮面夫婦どころか崩壊した。
ささやかな嫌がらせを繰り返しているうちに朔夜くんがこちらに来た。
努力を重ねて
初恋の女の子と知り合うも性行為にトラウマを持つ女の子は嫌がって
抱けない……
後は執念深いストーカー気質のある朔夜くんが
付き纏いをして、勝手に疑って
無理やり手を出して遅かれ早かれ殺すか無理心中かなと思った。
腐敗が早まる様に部屋を密閉したり日光が差し込むカーテンを微妙に開けておいたり
本当は覗きに行って腐っていく様を見ていて
いい頃合いで朔夜くんに行きなよとけしかけて
頼りになる兄さんとして登場⭐︎
あとは勝手に懐いて俺に騙されて命令に従って強くなる方法だと信じて悪食を重ねて
壊れていくのが楽しみになった。
そして全部をめちゃくちゃにしてもらわないとこの恨みはおさまらない――
両親も周りもあいつに期待しているからこそ身動きが取れない俺の代わりに頑張ってもらう。
その為にもう少しだけ俺も頑張らないといけない。
「さっくん頑張ってね」
臍を固める シラタマイチカ @shiratama612
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