夢の跡8

 頭の中がグルグルと回る。

歩いている道はあまりによそよそしくここがどこかわからなかった。

四合院もこの街から消えていた。

バニラも死んでいた、とっくに。

ジャンボを殺した?バニラが?なんでそんなことを書き残した?全て考えなくともわかる事だ。


家に帰るべきだろうか。



家…………?

思考が一気に崩れた。



 ここはどこなんだ。

家に帰りたい。

ジャンボとバニラが待つ四合院へ、帰りたい。

頭痛はもう耐えきれないほど、彼の頭を締め付けた。

病魔を退けるための薬を飲んでいない。

鼓動は明らかにおかしなリズムを刻んだ。

だからどうと思うこともない。


ただ、ただ、私は家に帰りたい。


 脂汗が流れ、顔は青白くなっていた。

その場に両膝をつき、加齢でシワの増えた手で顔を覆った。

体の不調などもう、気にもならなかった。



家に帰りたい。



『なぁ、大丈夫?』



 ハッとした。

幼い声が、心配そうな声が、耳に届いた。

この声を私は、俺は。

知ってる。



『チョコ…取り敢えず一緒にいくか?』



顔をおさえた手をどけた。

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