夢の跡7

 食堂の店員は若い人ばかりだった。

店主はその中では歳がいっていたが、そばに住んでいた3人のことは知らなかった。

しかし、店主が店の奥に声をかけ、先代の店主を呼んでくれた。



「なあ、チョコとバニラとジャンボって人知ってるか?」



そう息子の店主が尋ねた途端、先代の顔色が変わった。



「彼は……?」



目の前の男性について、先代の店主は息子へと聞く。



「その……当時チョコって名乗ってらっしゃったんだって」



先代は少し震えた声を出し、男性に声をかける。



「本当に……チョコなのか?」



 葛藤をおさえて頷いた。

先代はまだ、信じられないという顔だったが、当時の事件を語り出す。



「雨の日にジャンボさんの遺体が見つかって、チョコもバニラも行方がしばらく分からなくなって……街の者はみんな心配してたんだよ。

なにがあったのかなにもわからなかった。

しかもそれから数日経った時、四合院の中でバニラの遺体も……見つかった」



 絶句した。

遺体が見つかった?あの場所で?



「遺書にはバニラが親を……ジャンボさんを殺したと書かれてた。あの事件はそれで終わった。

でも街の者は誰もそんな遺書を信じてなかったんだ。誰かに書かされたんだと思っていた。

私も少しは泣いたよ。ジャンボさんもバニラもチョコも、ここの常連だったんだ」



 先代は深いため息のあと、また目の前の男性と視線を合わせる。



「本当にアンタは、チョコ……なのか?」



 風貌があの時からどれだけ変わったかは、自分では分からない。

けれど、きっと、何度も尋ねられるほど、私は「チョコ」ではなくなっていたのだろう。



「ありがとうございます……。当時の事件を私は……ほとんど知らないまま生きていました」



 先代はずっと訝しげな顔をしていた。

彼は頭を下げて食堂を出た。

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