第10話:子供のころの遊び相手

Cさんが幼かったころの話。

Cさんの住んでいるアパートの前には小さな公園があった。

かぎっ子だったCさんは小学校から帰ってくるといつもその公園で遊んでいた。

遊び相手はNという女の子。Cさんが帰ってくると必ず公園にいて、それで一緒に遊ぶのだ。

NはCさんが家に帰るまで一緒に遊んで、いつも公園でサヨナラしていた。

Cさんは両親にNのことを話していたが、このアパートに同級生なんていたかしら?と両親は不思議そうにしていたらしい。

そんな風に過ごしていたCさんだったが、高学年になるにつれて交友関係が広がり、公園でなく友達の家に遊びに行くことが多くなった。

Nを誘ったこともあったが、Nは悲しそうに首を横に振っていた。

友達の家で遊び、帰りの放送が聞こえだしたので帰り支度をし、アパートへ帰る。

そうすると、公園にはNがいた。

二言三言会話をする。

「そろそろ帰らないと。Nちゃんは帰らないの?」

「うん、もう少しここにいるの」

そっか、と納得して手を振って別れる。

いつもそうだった。NはCさんが帰るまで公園にいて、部屋に帰って公演を見てみるといつの間にかいなくなっているのだ。

Cさんはそのことを不思議に思いながらもそういう子なのだと受け入れていたそうだ。

私にそのことを話してくれたCさんは、こう付け加えた。

「そもそもNって、私以外と話しているのを見たことがなかったの。同じ公園に他の子もいたけど、他の子と遊ぼうとしたらNはいつの間にかいなくって。不思議よね」

Cさんはそういいながら笑っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る