第9話:階段を下りる音
Aさんが幼い頃の話。
Aさんの実家は階段がきしむ音がいつもしていた。
まるで怪談を誰かが下りてきているようで怖かったが、両親はただの家鳴りだといって気にしていなかった。
そんなある日、いつものようにギシ、ギシ、と階段がきしむ音がした。
Aさんはビクリと震えたが、いつものことだと思いなおして気にしないようにしようとした。
しかし、その日の音はいつもと違っていた。
ギシ、ギシ、
まるで階段を一段ずつ降りているようにきしむ音がする。
一段、一段、ギシ、ギシ、と音が下の階に降りてくる。
最後の一段、確かに降りた音がした。
そして
トン、トン
まるで廊下を歩くような音に、変わった。
音が変わったことは両親も気づいたようだ。じっと廊下から続く扉を見ている。
トン、トン、
足音はドアの方まで近づいていく。
トン、トン
あと少しでドアの前にその音が来る、
トン
その位置で、音が止まった。
父親が廊下に出てみたが何もなかったようで不思議そうに首をひねりながら戻ってきた。
Aさんはその日は廊下に出ること自体が怖かったが、特に何事も起きずいつもの日常に戻ったそうだ。
ただ一つ、階段のきしむ音が、その日以来しなくなったこと以外は。
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