第5話:新校舎

私の通っていた学校の話。

私が通っていた学校は、私の代に新校舎に移った。

新しい校舎というのはきれいなもので、七不思議の類も存在しない。

先輩曰く、旧校舎のころにはそれこそ八不思議十不思議くらいはあったとのこと。

旧校舎のころはこのあたりでも古い方に分けられる建物だったため、怖い話に事欠かなかったそうだ。

例えば保健室の一番端のベッドにいる人影。

例えば3年6組の教室にいる少女。

例えばとある部室にたたずむ赤い服の女。

先輩は色々な話を披露してくれたが、そのどれもが二度と見ることのできないものだと思うと、怖いよりもなんだかしんみりとした気分になってしまった。

「そういった霊たちも、いなくなっちゃうんですよね」

しんみりとしながら私がそう口にすると、先輩はきょとんとした顔をし、笑って首を振った。


「どうせいつか戻ってくるよ」


先輩曰く、通りかかっただけの幽霊とは違い、学校という枠組みに入り込んだ霊たちは、校舎という入れ物を壊した時こそ霧散するが、そこに人間がいて、校舎という入れ物がある限り、何度でも戻ってくるものなのだそうだ。

時には姿を変えて、時には出現場所を変えて。

「だから、Kがいる間は無理かもしれないけど、いずれこの新校舎にも七不思議が生まれるんだよ」

そう言って笑う先輩が、恐ろしいと感じてしまった。

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