第3話:足音

Bさんに聞いた、修学旅行での話。

Bさんは三人部屋で、仲のいい子たちと同じ部屋になった。

修学旅行の夜は練るのがもったいなく感じるほど心が浮足立っていた。

夏だったこともあり、三人は怖い話で盛り上がることにした。

携帯電話を持ち込んでいたのでそれで怖い話を調べては、語る。

「これは私が高校生の頃体験した話です」

「今じゃん」

なんて茶々を入れたり、本気で怖がってキャーキャー悲鳴を上げたり。

結構騒いでいたらしいが、不思議と見回りの先生が怒鳴り込んでくるようなことはなかったそうだ。

何話話しただろうか、Bさんは不意に肌寒く感じた。

冷房はついていたが、操作していないのに温度が下がることなんてないだろう。

温度を確かめに行くが、入ってきた時と同じようなごく普通の温度が表示されている。

けれども、寒い。息が白く感じる。

そのことが怖くて、Bさんは二人にそろそろ終わりにして寝ようか、と提案した。

他の二人も同じように感じたらしく、怖い話はそこでお開きとなった。


部屋の電気を消して、布団にもぐりこむ。

寒さを気にしないようにぎゅっと目をつぶって寝よう寝ようとしていると、パタパタという足音が気になった。

この階は生徒たちが止まっているから、他の客はいないはずだ。

こんな時間に外を走り回っていたらそれこそ先生に見つかって𠮟られてしまうだろう。

怖くなって布団の中に頭を入れるようにして寝ていると、パタパタという足音が近くから聞こえることに気付いた。

(自分たちの部屋から聞こえてる……!)

気付いてしまうともう動けない。

足音は自分たちのベッドの周りを走り回っている。

結局、朝になるまで布団をかぶった状態で一睡もできなかったそうだ。

あとで同室だった二人に聞いてみると、二人も足音を聞いていたらしい。

東京の、ごく普通のホテルでの話。

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